第41節「英雄」
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じゃありませんか……」
ツェルトの疑問に応えるウェルの顔は、何を当たり前のことを、と書いてあるように見えた。
「飽くなき夢を見て、誰かに夢を見せるもの。誰もが尊敬し、誰もが憧れ、誰もが讃える至高の存在……それこそが英雄のあるべき姿ッ! 僕が目指した英雄の姿だッ!」
「へぇ、そうかい……。じゃあお前、既にアウトだろ」
「……なんだと?」
ウェルが語る英雄論を、ツェルトは一笑に付す。
「だってよドクター、今のあんたはどっちも満たしてないだろ?」
「何を言っているのです? 今の僕は──」
「無辜の人々を力で捩じ伏せ、気に食わない奴は利用した上で切り捨てる。そんなやり方の何処にロマンチズムがある?そんな汚い手段の何処に憧れるやつがいる?」
「理想だけじゃ英雄にはなれませんよ」
「ほら、まただ。自分勝手とリアリズムを履き違えてる。自分以外はどうでもいい、そんな人間が英雄の器であるものかよ……」
「うるさいッ!やはりあの時始末し損ねたのが失敗でしたね……今ここでそれを精算してやりますよッ!」
激昴したウェルは再びコンソールに命令を送る。
次の瞬間、ツェルトの足元にポッカリと穴が開く。
「落ちろッ!今度こそ海まで真っ逆さまに落っこちろぉぉぉぉぉッ!」
ツェルトの姿が穴の中へと消えた……その直後だった。
「転調・コード“エンキドゥ”ッ!」
穴から伸びてきた楔が床に打ち込まれ、落ちていったツェルトが勢いよく飛び出す。
「何ぃぃぃぃッ!?」
「同じ手を食うかよッ!どりゃあああッ!」
ツェルトは落とし穴から飛び出した勢いをそのまま利用し、ウェルに飛び蹴りを放つ。
ウェルは慌てて防御姿勢を取り、ツェルトの飛び蹴りはウェルの左腕に受け止められる。
ウェルの体幹で受け止めきれるはずがない。
ツェルトがそのまま蹴り込もうとした、その時だった。
「──なッ!?」
足を受け止めたウェルの腕……ネフィリムの左腕が不気味に蠢き、ツェルトのギアに喰らいついた。
ツェルトは慌てて反対側の足でウェルの腕を蹴り、喰らいつかれた方のプロテクターをパージする。
距離をとって着地すると、ウェルの左腕がプロテクターを飲み込むところであった。
「ネフィリムの特性は僕の腕にもそのまま移植されています。昨日までの僕だと思わないでくださいよッ!」
「チッ、本ッ当に厄介な真似しかしないなお前はッ!」
両手に鎖を握るツェルトと、ネフィリムの腕を拳と握ったウェル。
相容れない二人の男が、互いのプライドをかけて遂にぶつかり合う……。
「はあああッ!」
先端に楔がついた鎖を、鞭のように振るう。
「ひいいいいッ! って、どこを狙ってるんですか?」
ウェルは
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