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ザンの言葉
第四章

[8]前話
 漁師達はそれぞれの家族と自分達の言うことを信じてくれた者を連れて村の傍にある高い山に家のものを持てるだけ持ってだった。
 すぐに逃げた、そして彼等が頂上まで行くとだった。
 そこで海から大津波が来た、大津波は村もその周りもあっという間に飲み込んだ。海に泊めてあった船達も。
 そういったものを全て飲み込むのを見てだ、安吉達は言った。
「本当だったな」
「そうだったな」
「ザンの言ったことは」
「本当に大津波が来たな」
「若しおら達がまだ村にいたら」
「海にいたら」
 どうなったかというのだ。
「お陀仏だったな」
「間違いなくな」
「そうなっていたな」
「危ないところだった」
「本当にな」
「若しもな」
 安吉はここで言った。
「俺達があの時ザンを逃がさないと」
「ああ、その時はな」
 勘一が彼に答えた。
「わし等もな」
「津波に飲み込まれてな」
「間違いなく死んでいた」
「そうなっていたな」
「あの時ザンを助けてよかったな」
 勘一は心からしみじみと思いこの言葉を出した。
「本当に」
「そうだな」
 安吉は勘一のその言葉に頷いた。
「そう思うとな」
「あの時ああしてよかったな」
「ああ、後はな」
「これからだな」
「何とかしてな」
 それこそというのだ。
「村も元に戻して」
「船ももう一度造ってな」
「やっていくか」
「命があるんだ」
 何とかそれを拾ったからだというのだ。
「だからな」
「ここはか」
「ああ、やりなおすぞ」
「そうだな、死ななかったんだ」
 それならとだ、安吉は勘一に応えた。
「もう一度やりなおすか」
「そうしていこうな」
 勘一も言う、そしてだった。
 漁師達は家族それに自分達の言葉を信じてついてきた者達と共に村があった場所に戻り村を一から復興させはじめた、船も漁の道具も作りなおさねばならず大変であったが彼等は命がありそれなりの数があり何とかなった。そしてだった。
 村は時をかけて元に戻りかつての漁村として生きていくことが出来た。そうなったものザンの言うことを聞いたからだと村人達は後世になっても話した。明和八年にあった実際の話である。


ザンの言葉   完


                     2020・3・13
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