第三章
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「先日のお礼はそちらです」
「わし等に知らせたいことがか」
「そうなります」
「そうか、ではそれは何だ」
安吉はザンに問い返した、見れば勘一達他の船に乗っている漁師達も集まって彼女の話を聞いている。
「一体」
「もうすぐこの辺りで大津波が起こります」
ザンは漁師達に真剣な顔で話した。
「ですから先にです」
「逃げろか」
「はい、高いところに」
「山にか」
「そうして下さい、間もなくなので」
ザンは安吉達にさらに話した。
「漁から港に戻られますと」
「すぐにか」
「村の人達にお話して」
そしてというのだ。
「そのうえで、です」
「逃げろというのか」
「そうされて下さい」
「ザンは嘘は言わんという」
ここで勘一が安吉達に言ってきた。
「だからな」
「今言っていることはか」
「間違いない、だからな」
「漁から帰るとか」
「いや、いますぐにだ」
それこそとだ、勘一は安吉に答えた。
「漁を止めてな」
「そしてか」
「戻った方がいい」
村にというのだ。
「そしてだ」
「村の連中に話してか」
「すぐにだ」
「山に逃げるか」
「そうするぞ」
「その方がいいです」
ザンも勘一の考えをよしとした。
「ですから」
「今すぐにか」
「はい、お逃げ下さい」
こう言うのだった。
「高いところに」
「わかった、じゃあな」
安吉が頷いて答え他の漁師達もだった。
彼等は即座に漁を止めてそのうえですぐに村まで戻った、そうして村の者達に話すと信じる者は信じたが。
信じない者は信じない、安吉達はこのことに焦った。
「何とか家族は皆信じてくれたが」
「嘘言えとか言う奴いるな」
「村一の嫌われ者の尚久とかな」
「あと村の端の一人暮らしの婆とかな」
「そうした奴はもう仕方ないな」
勘一は焦る彼等に難しい顔で答えた。
「だから信じてくれた奴だけをな」
「連れてか」
「そうして今すぐにか」
「山に逃げるか」
「そうするぞ、家のものも持てるだけ持ってな」
そうしてというのだ。
「すぐに逃げるぞ」
「そうするか」
「じゃあ今すぐにだな」
「山に逃げるか」
「家族や信じてくれた奴を連れて」
「そうするぞ」
こう言ってだった。
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