第二章
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「網にかかったからにはな」
「網から外さないとな」
「そうしないとな」
食わないことにしてもとだ、こう話してだった。
安吉達はまずはザンがかかっている網を船にあげた、するとザンはすぐに安吉達に対して願い出た。
「あの、どうか」
「ああ、あんたをどうかするつもりはないからな」
安吉は勘一に言われたことをそのままザンに話した、見れば他の漁師達も彼と同じ表情になっている。
「だからな」
「それでは」
「すぐに海に戻れ」
安吉はザンに告げた。
「いいな」
「それでは」
「ああ、もう二度と網にかかるな」
ザンにこう告げた、すると。
ザンは安吉達に深々と頭を下げてから自分から海に飛び込んだ、そのうえで姿を消した。安吉はそれを見守ってから勘一に言った。
「これでいいな」
「ああ、本当にな」
「ザンは食うものじゃないな」
「人は適当に長生きすればいいんだ」
「下手に何百年も長生きするとか」
「いいことはない」
自分が言った通りにとだ、勘一は話した。
「それこそな」
「爺さんの言うこと聞いたらそうだな」
「向こうではそうして一人寂しくずっと暮らしていた尼さんがいたらしい」
「ヤマトにはか」
「ああ、何百年もな。その話を昔聞いてな」
そうして戸田、勘一は安吉に話した。
「わしも思う様になった」
「何百年も生きる様じゃないか」
「ああ、そしてな」
「ザンは人間の姿をしているからか」
「余計に食うものじゃない」
そうも言うのだった。
「本当にな」
「そういうことだな」
「ああ、だからな」
「それでか」
「これでよかったんだ」
「ザンは食わずに海に帰してやることか」
「海にあるものでも何でも食ってもいいものでないしな」
勘一はこうも言った。
「そうだろ」
「それもそうだな」
「そうだ、じゃあ漁を続けるか」
「そうするか」
安吉は勘一の言葉に頷いた、そのうえで。
仲間達と漁を再開した、この日は大漁を喜び村に帰った。その後も漁を続け数日経った時にだった。
漁をしている安吉達の船のところに何かが来た、それはというと。
「あんたは」
「はい、先日は有り難うございました」
数日前助けたザンが海から顔を出して言ってきた。
「お陰でこうしてです」
「海でか」
「暮らせています」
「それは何よりだな」
安吉がザンに応えた。
「それは」
「はい、それでお礼にです」
「いや、何もいらんぞ」
笑ってだ、安吉は貰いものはいいとした。
「大したことはしていないからな」
「いえものではないです」
「そういうのではないか」
「はい、実はお知らせに来まして」
この度はというのだ。
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