第四章
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「実は全部知っていたでごわすよ」
「おいのことを」
「クロドンのことは」
まさにというのだ。
「だからでごわす」
「それで、ですか」
「そうでごわす」
まさにというのだ。
「だから自信を以てでごわす」
「おいに対したでごわすか」
「そうでごわした」
こうクロドンに告げた。
「何でも知っていれば対せて勝てるでごわす」
「ううむ、見事でごわすな」
身体が戻ったクロドンは大久保そして彼の隣にいる西郷の隣に座って述べた。
「これはまた」
「逆に言えば知らなかったら勝てなかったでごわす」
「全ては知っていたらでごわすか」
「そういうことでごわす、しかしおまんさあ今言ったごでごわすな」
「死ぬ時は薩摩で戦ば起こった時でごわすな」
「その時になればでごわすか」
「喜んでこの命捨てるでごわす」
こう言うのだった。
「おいは」
「妖怪も薩摩モンでごわすな」
そう聞いてだ、大久保は感心した声で言った。
「戦の時にこそ命ば捨てるでごわすか」
「そうするでごわす」
「その心受け取ったでごわす、ならおいも」
「戦の時に」
「この命捨てるでごわす」
「おいもでごわす」
西郷もここで言った。
「この命戦の時にこそでごわす」
「そうでごわすな」
「是非にでごわす」
「なら吉どん、クロドンも」
「三人共その時にこそでごわす」
「命捨てもっそ」
三人は何時しか誓い合った、そうして。
西郷と大久保はクロドンと別れた、そのうえで。
西郷は大久保に言った。
「おいはこの命薩摩にひいては天下の戦にでごわす」
「捨てるでごわすな」
「そうするでごわす」
「おいもでごわす」
大久保もこう返した。
「クロドンもそう言っていたでごわす」
「そこは妖怪も思いが同じなら」
「人が。まして侍がそうでないなら何でごわすか」
「全くでごわすな」
「そして吉どん」
大久保は共に歩く西郷を見てこうも言った。
「おいはその思いの吉どんといつも一緒でごわすぞ」
「そう言ってくれるでごわすか」
「吉どんとおいが一緒なら藩も天下も変えられるでごわす」
「出来るでごわすか」
「必ず出来るでごわす、これからも一緒でありもっそ」
西郷に強い声で告げた。
「それでよかでごわすか」
「おいも一蔵どんが一緒なら頼もしいでごわす」
西郷は西郷でこう返した。
「なら一蔵どん共に」
「命捨てていくでごわすぞ」
二人で誓いつつ帰った、大久保利通の逸話の一つである。彼の知恵と西郷との誓いは実際に日本を大きく変えた。そのことは二人がまだ子供の頃から見られた。そう思うとこの逸話は非常に面白いものであると思いここに書かせてもらった。一人でも多くの人が読んで頂けるならこれ以上有り難いことはない。
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