第四章
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「頼んでも断られる者が出る」
「それは仕方なかろう、しかし吸わせてくれる者もおる」
「その者に吸わせてもらってか」
「満足せよ」
「仕方ないのう」
「というか自分で買って吸えばいいであろう」
ここで藩士が言ってきた。
「そもそも」
「煙草の金は女房が出してくれん」
「お主結婚しておったか」
「子供も三人おるぞ」
「そうであったか」
「子育てに金がかかってな」
それでというのだ。
「女房が煙草の金まではな」
「出してくれぬか」
「それでじゃ」
カワッパは藩士にも話した。
「いつもせがんでおる」
「世知辛い話であるな」
「煙草を吸うにも一苦労じゃ」
「それは仕方ない、しかしな」
渡辺はここでまた言った。
「これからはな」
「正体を出してか」
「そのうえで頼むがいい」
「そうすべきか」
「左様、ほれ吸え」
渡辺は自分の煙管を差し出して言った。
「好きなだけな」
「吸っていいのか」
「そして胡瓜もな」
こちらもというのだ。
「食うがいい」
「そうもしていいか」
「そうせよ、よいな」
「気前がいいのう」
「わしも金はないが」
家老でもというのだ、田原藩は貧しい藩でそれでだったのだ。
「しかしこれ位はな」
「くれるか」
「気にすることはない」
「そうか、ならな」
カワッパも頷いてだ、そうして。
渡辺から胡瓜を受取ると喜びで飛び跳ねつつそのうえで何処かへと消え去った、その彼を見送ってからだった。
渡辺は藩士に笑って話した。
「これで娘の正体は明らかになった」
「河童でしたね」
「そうだ、しかし河童でもな」
「害を及ばさなになら」
「それでいいな」
「そうですね、煙草はせがみますが」
藩士もこう言った。
「それでもです」
「悪い河童ではないな」
「それならですね」
「これでいい、河童が煙草をせがんでも自分の姿で言うなら」
堂々とそうすればというのだ。
「わしは吸わせるしそうした者も多いであろう」
「それならよしですね」
「そうだ、娘に化けて姑息に頼むより」
「自分の姿で頼む方がですね」
「よいであろう、ではことが終わったので」
それでとだ、また言う渡辺だった。
「去るか」
「煙草をまだ吸っていますが」
「煙草は歩きながらでも吸える」
渡辺は笑って藩士に応えた。
「だからな」
「それでもですか」
「よいからな」
だからだというのだ。
「城に戻って殿に全てをお話しようぞ」
「わかりました、それでは」
藩士は渡辺のその言葉に頷き彼と共に戻った、そして渡辺は藩主にことの全てを話して一件落着となった。以後カワッパはちゃんと自分の姿を出して煙草をせがみ吸わせてもらう様になった。愛知県に昔から伝わる渡辺
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