第三章
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「そこから駆け上がるか」
「それは一か八かやな」
「あくまでな、今はそれよりも横にかわすか」
「それがええか」
「そうしよな、このまま駆け下りてもあっちの方が速いから追い付かれるわ」
「そやな、追い付かれたら何されるかわからんし」
相手が妖怪だからだ、優子はこう考えた。
そのうえで由紀にこう言った。
「横にな」
「かわそうな」
「そうしよな」
こう話してだ、二人は。
駆け下りつつその血だらけの首と手首が迫ったところでだった。
さっとそれぞれ左右にかわした、右にいた優子は右に左にいた由紀は左にそれぞえそうしてそれでだった。
妖怪をかわすとそこから踵の力を思いきり使って反転してだった、駆け下りるのを強引に止めてから駆け上がりに移った。そうして峠の頂上まで一目散に上がり。
頂上に着いてから下の方を見るとだった。
そこにはもう首も手首もなかった、優子はその様子を見て由紀に言った。
「消えた?」
「そうみたいやな」
由紀もその様子を見て優子に応えた。
「どうやら」
「急に出て来て急に消えたな」
「ほんまにな」
「妖怪ってそうやっていうけど」
「あの妖怪もみたいやな」
「そやな」
優子は由紀の言葉に応えた。
「どうやら」
「そうみたいやな」
「何ていうか」
優子は首を傾げさせて言った。
「狐に摘ままれた」
「そんな気持ちやな」
「そんなんや」
「ほんまやな、ほなこれからどうする?」
「どうするって夕方まで予定立ててるし」
それでとだ、優子は由紀に返した。額に流れる汗をタオルで拭きながら。見れば由紀もそうして駆けた後に流れた汗を収めている。
「そやから」
「観光続けるか」
「そうしよな」
二人でこう話してだった、妖怪に脅かされた後であっても二人は観光を続けた。そして旅館に戻ってだった。
風呂に入って身体を清め浴衣姿になってから部屋で夕食を食べてその後でまた風呂に入ろうと風呂場に向かった時に会った旅館の中居にふとだった。
妖怪のことを聞こうと二人で話して聞くとだった。
初老の中居は二人にこう言った。
「ああ、イマモですね」
「イマモ?」
「イマモっていいますと」
「この島昔からあの妖怪が出るんですよ」
あっさりとした口調での返事だった。
「峠で血だらけの首や手首が上から下に転がってくるんです」
「私等が見たみたいに」
「ああしてですか」
「何でか知らないですが昔ここで妖怪が出るって話をしたら」
二人がそうした様にというのだ。
「イマモ!って叫んできて」
「ああしてですか」
「転がってくるんですか」
「それで驚かされますが」
「捕まったら食べられます?」
「そうなります?」
「あっ、驚かせるだけで」
中居は二人の心
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