第二章
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「充分な程です」
「しかし和上は高齢、しかも位もあるしな」
「一人で外に出るとですな」
「危ういし格もあるしな」
「お忍びはなりませんな」
「それはならん」
生真面目な秀忠は即座に答えた。
「何かあってはことじゃ」
「だからですな」
「それはならんぞ」
「拙僧も承知しております。ですから」
「供の者を一人連れてか」
「そのうえで、です」
天海は秀忠に温和な笑顔で答えた。
「ことを解決してきます」
「そうしてくるか」
「これより」
こう言ってその夜にだった。
天海は彼自身が言った通りに供に若い弟子を一人連れてそのうえで夜の江戸の街に出た、流石に普段の見事な僧衣に袈裟ではなく動きやすい質素なものを着ている。
そのうえで夜の江戸を歩きつつ言うのだった。
「夜の江戸も風情があるのう」
「はい、ですが」
供の僧は彼に怪訝な顔で言った。
「やはりです」
「ははは、あやかし退治にか」
「我等二人だけとは」
「いや、お主は後学で見てくれるか」
「それだけでよいですか」
「左様、全てはわし一人でな」
天海は僧に穏やかな声で話した。
「ことを果たす」
「左様ですか」
「何、案ずることはない」
天海はさらに述べた。
「心を静めるだけじゃ」
「それだけですか」
「どうしてもというのなら経を読みな」
そうしてというのだ。
「心を静めよ」
「それでいいですか」
「そうじゃ、ではな」
「これよりですな」
「夜雀が出る場所に向かおう」
こう話してだ、そしてだった。
天海は若い僧を連れてその夜雀が出る場所に来た、すると聞いた通りにだった。
キャッキャッと声が聞こえてきた、それは笠の中からも袂の中からも聞こえてくる。若い僧はこの事態を受けて。
お経を唱えだした、天海はそれを聞いてよしとした。
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