第5楽章〜鋼の腕の伴奏者〜
第40節「はじまりの歌」
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を救いたい……月の落下がもたらす災厄から、みんなを助けたい……」
その答えを聞いたセレナは、ふわふわとマリアの前まで降りてくると、彼女の手を取った。
「生まれたままの感情を、隠さないで……」
「……セレナ」
そしてセレナは、いつも二人で口ずさみ続けてきたあの歌を、唄い始めた。
「りんごは 浮かんだ お空に」
「りんごは 落っこちた 地べたに」
「星が」
「「生まれて」」
「歌が」
「「生まれて」」
「ルル・アメルは 笑った」
「「とこしえと──」」
未だ続いていた中継により、二人の歌は世界の人々へと届く。
偽りなき感情と共に紡がれた歌に、人々は自然と天を見上げ、祈るようにその手を合わせた。
街の人々が。組織の人々が。生まれも育ちも、人種も国境も超えて、人々は一つに繋がり、70億の歌は世界を包んでいく。
そして、月へ飛ばされた制御室では……。
大気圏脱出の準備もなしに発射されたせいで、制御室の中はひどい有様だった。
だが、万能椅子《Poweful_2》のパワードスーツ機能を起動させ、ナスターシャ教授は崩落した瓦礫の中から這い出した。
「世界中より集められたフォニックゲインが……フロンティアを経由して、ここに集束している──これだけのフォニックゲインを照射すれば、月の遺跡を再起動させ、公転軌道の修正も可能……」
ナスターシャ教授は血を流しながらも、既にこの先長くない老体に鞭打って、最後の気力を振り絞る。
『マリア……マリア……ッ!』
「──マムッ!?」
ナスターシャ教授からの通信に振り向き、コンソールへと歩み寄るマリア。
気が付くと、目の前にいたセレナの姿は、既に消えていた。
『あなたの歌に、世界が共鳴しています……これだけフォニックゲインが高まれば、月の遺跡を稼働させるには十分ですッ! 月は私が責任を持って止めますッ!』
「──マムッ!」
これがナスターシャ教授からの、最後の通信だ。
彼女の言葉からそれを実感し、マリアは思わず叫ぶ。
無論、ナスターシャ教授もマリアが悲しむのは分かっている。
ツェルトや調、切歌には別れの挨拶さえできないのが残念だ。
だが、それでも……ナスターシャ教授が最期の言葉を伝えるのは、やはりマリアだった。
一番辛い思いをさせ、それと同じ分だけ信頼してきた、自分の意志を継いでくれるであろう彼女に、ナスターシャ教授はニックネームの通り“母親”としての言葉を投げかけた。
『もう何もあなたを縛るものはありません……行きなさいマリア。行って私に、あなたの歌を聴かせなさい……ッ!』
「マム……」
その言葉に大きく頷くと、マリアは涙を拭い、思いっきり笑って応えた。
「……OK、マ
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