第5楽章〜鋼の腕の伴奏者〜
第40節「はじまりの歌」
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……」
ツェルトはそう言って、マリアの肩から手を放す。
「ウェルとの決着は、俺が着けないとな」
「ツェルト……ッ!」
階段の方へと向かって行くツェルト。
マリアは彼の背中へと手を伸ばし……そして次の瞬間には、その背中から抱き着いていた。
「お願い……私をひとりにしないで……」
「マリィ……」
マリアの目には涙が浮かんでいる。
先程まで、死んだとばかり思っていた彼が生きていた。だが、その彼は再び危険へと飛び込もうとしている。
マリアには、もう彼を失いたくないという強い思いが渦巻いていた。
──分かっている。俺が死んだとばかり思っていたんだ。マリィは不安なんだろう。
俺だって一緒に居てあげたいし、ずっと傍にいてやりたい。本気でそう思ってる。
だが……その時間はまだ、今じゃない。
俺はマリィを泣かせたあいつを……調や切歌を悲しませ、マムを地球から追い出したあのゴキブリ野郎をぶん殴らなくちゃいけない。
だから……行かなきゃ……。
「ごめんなマリィ。でも……決して君は一人じゃない」
「……え?」
顔を上げたマリィの方を振り返り、その両手を握る。
「俺も、マムも、調や切歌も、離れてたって心が繋がってる。だって俺達、家族だろ?」
「家族……」
そう。俺達は家族だ。
だから、この絆は決して切れやしない。
勿論、セレナだって見守ってくれているはずだ。
「大丈夫だ。絶対、生きて帰ってくる。信じてくれ」
「……絶対よ……絶対に、帰ってきて……信じてるから」
「ああ、約束だ。……マリィ──」
マリィの涙を指で拭って、そして今度は俺の方から抱き締めると……その言葉はするりと俺の口をついて出た。
「──3000回愛してる」
「……ッ!!」
そして俺はマリィから離れると、階段を一気に駆け下り、風鳴司令達が消えた亀裂を飛び降りた。
……きっと、あの日から無意識のうちに、俺はその言葉を封印していたんだろう。
心でどんなにマリィを愛していても、セレナをあんな風にしてしまった自分にはマリィにその言葉をかける資格はないと思い込んで、自然と口にしなくなっていたんだ。
でも……言葉にしなきゃ伝わらない。あの場で言葉にしておかなきゃ、マリィはきっと救えない。
俺の本能はそれを理解していたんだろう。
まぁ、額にキスしたのはやりすぎかもしれないが。
でも、伝えられてよかった。
これで心置きなく戦えるッ!
待ってろドクター・ウェルッ! これまでの落とし前、キッチリつけさせてもらうぞッ!
その頃フロンティア中枢、ジェネレータールームでは……。
「ソロモンの杖が無くとも、僕にはまだフロンティア
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