第百六十話 伊勢の神託その四
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「伊勢うどんや伊勢海老、松坂牛も食うか」
「食うことも忘れないか」
「そら人は食わなあかん」
それ故にとだ、耕平は英雄に笑って返した。
「それでや」
「それはその通りだな」
「そやろ、ほなな」
「伊勢に行くとか」
「神託を伺うついでにな」
やはり神託がメインなのは耕平もわかっている、それでそのことは忘れずにそのうえで言うのである。
「食うで」
「そして酒もだな」
「勿論や、それで牛はな」
その松坂牛はというと。
「すき焼きにしよか」
「おお、ええのう」
当季はすき焼きと聞いて笑って言った。
「和牛は何をしても美味いが」
「すき焼きがやな」
「一番美味いぜよ」
だからだというのだ。
「丁度いいぜよ」
「そやな、しゃぶしゃぶもええけどな」
「すき焼きというとぜよ」
「あれに勝るのないやろ」
「和食ならそうぜよ」
「悪くないが」
英雄は二人の和牛に食べ方について間に入って述べた。
「ステーキはないか」
「ステーキじゃな」
「俺はそちらもいいと思うが」
「あれは洋食の王者ぜよ」
当季は英雄のその指摘に笑って返した。
「わし等は今は和食の話をしてるぜよ」
「それでか」
「だからぜよ」
それでというのだ。
「わしは今はすき焼き推しぜよ」
「そういうことか」
「ならじゃな」
「実際に頃合いを見てな」
英雄は当季にも話した。
「そしてだ」
「伊勢に行くんじゃな」
「そうする、ではな」
「今は政に励むぜよ」
こう言って当季も仲間達も英雄と共に政に励みそうしてその頃合いが来た時に実際に移動の術で伊勢に行った。
そしてそこでまずはだった。
伊勢神宮に入った、神託を伺う為だがまずはその神聖な世界に入った。木々が生い茂る中に社が点在するその中で。
一行は感じるものがあった、それで英雄は言った。
「こうしてだ」
「ここにいるとのう」
「自然と神聖な気持ちになるな」
こう当季に話した。
「それだけで」
「そうじゃな、わしもじゃ」
当季もその中で言う。
「何かこうな」
「神々の世界にいる」
「そう思えてくるぜよ」
「他の神社仏閣でもそうだが」
「ここはぜよ」
「尚更だ」
そう思えてくるというのだ。
「神聖さが違う」
「座しておられる神様が違うからな」
「だからだな」
その天照大神の為にというのだ。
「俺達も神聖さを感じるな」
「そうなるぜよ」
「そうだな、ではな」
「これからじゃのう」
「神託を伺いに行く」
英雄は木々の中で言った。
「いいな」
「はい、それでは」
巫女である紅葉が応えた、彼女がその神託を担う役目であるからだ。
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