第六章
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桃香は最高級の素材に調理道具キッチン全体もそうしたもので揃え妥協なく菓子を作り続けた。その彼女に店のオーナーであるフランソワ=ボルジョワは言った。口髭を八の字にし黒髪を後ろで撫でつけた黒髪の痩せた男だ。背は一七五位でタキシードがよく似合っている。
その彼がこう桃香に言った。
「マドモアゼル、今回もやったわね」
「優勝しました」
「貴女は本当に最高のパティシエよ」
こう言うのだった。
「まさにね」
「最高の腕を持っていてですね」
「最高の目を持っているわ」
素材や道具を選ぶそれもあるというのだ。
「まさに私のお店に相応しい料理人の一人よ」
「その自信はあります」
「ええ、それではね」
「今度のお客様にですね」
「そう、サウジアラビアの王族の方が来られるわ」
この店にというのだ。
「その方のコースのデザートはね」
「私がですね」
「言うまでもなくね」
「お金のことはですね」
「一切気にしなくていいわ」
食材や道具を選ぶそれはというのだ。
「うちはそうしたお店だからね」
「最高級のものをお出しする」
「世界でね、だからよ」
「私もですね」
「そこは考えなくていいわ」
「そしてですね」
「作って食べてもらってね」
桃香に上品な笑顔で話した、見れば店の内装も見事だ。有名な彫刻家や画家の作品が飾られカーテンは絹である。その造りは宮殿の様だ。
「そうしてね」
「わかりました」
「その最高の料理を食べられる人は」
「それだけの人ですね」
「一人一人の品性はわからないけれど」
流石にそこまではわからない、どれだけの地位にいてどれだけの資産を持っていても下品な輩はいるからだ。
「けれどね」
「それでもですね」
「料理にかかっただけのお金は払ってくれるから」
「それで、ですね」
「この店は成り立っているから」
「私もですね」
「お金のことは気にしないでね」
一切というのだ。
「このお店はそうしたお店だから」
「わかりました」
桃香はオーナーの言葉に微笑んで答えた、そしてだった。
サウジアラビアの王族に腕によりをかけて最高の食材を使ったデザートを作って食べてもらった。その報酬を桃香が日本に帰った時に聞いてだった。
櫻良は眉を顰めさせて姉に言った。
「うちのお店ではね」
「絶対によね」
「作れないお菓子で」
「払われたお金もよね」
「コース全体で何よ、よ」
その料金はというのだ。
「法外じゃない」
「だからそうしたお店だから」
それでというのだ。
「それだけのお金よ」
「別世界ね、けれどお父さんとお母さんがお姉ちゃんをパリに行かせたことはよくわかるわ」
今ではというのだ。
「本当にね」
「私もよ、私がお家のお店継いだらお店潰してわ
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