第三章
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「行って来るわね、お給料もいいし」
「ならな」
「世界に羽ばたいてね」
「ええ、ただね」
ここでだ、桃香は。
少し考える顔になってそれで自分の隣の席にいる櫻良を見てから両親に尋ねた。
「お店は櫻良よね」
「私もずっと言われてるけれどね」
その櫻良も言う。
「私がってね」
「そうよね」
「そう、何でかしら」
「最初は私もお店が継ぐと思っていたけれど」
「ああ、お前は是非な」
父がその桃香に言った。
「うちじゃなくてな」
「遥かに凄いお店でなのね」
「お前が作りたい、コンクールで出している様なそれを作ってな」
「働いて欲しいのね」
「そう思っていたからな」
だからだというのだ。
「本当にな」
「このお話はなの」
「うちにとってもいい」
「そうなの」
「こう言ったら何だけれど」
母も桃香に言った。
「今回のお話をあんたが受ける気でいてくれてよかったってね」
「それってこう言ったらってお話じゃないでしょ」
「いえ、あんたがうちのお店を継ぐことはね」
「嫌だったの」
「そうなの」
「何で天才のお姉ちゃんがお店継いだら駄目なのか」
櫻良は姉の横で首を傾げさせて言った。
「本当にね」
「わからないわよね」
「お姉ちゃんもう洋菓子の業界で物凄い有名人よ」
櫻良はこのことを言った。
「天才美人パティシェって」
「美人かどうかはともかくね」
桃香はこのことはどうでもよかった、あくまで自分はパティシェとして天才であると考えているだけだ。
「私は天才だし」
「その天才のお姉ちゃんがお店継いだ方がね」
「いいってなるわよね」
「普通は」
「まあ確かに櫻良も腕はいいから」
パティシェのそれはだ。
「うちのお店やっていけるわ」
「そのことは嬉しいけれど」
「何で私はお店継いで欲しくないか」
「わからないわね」
「それははっきりわかる時が来る、二人共な」
父は腕を組んで言った。
「絶対にな」
「そうなの?」
「お父さんもお母さんもいつもそう言ってるけれど」
「そのことがわかる時が来るの」
「お店を継ぐのは私だって」
「そうだ、桃香はパリで世界一のパティシェになれ」
それを目指せとだ、父は桃香に告げた。
「そして櫻良はうちの店を継いでもっと美味しいお店にしてくれ」
「私はそっちね」
「二人共宜しくな」
「それじゃあね」
「そうさせてもらうわね」
娘達は父の言葉に頷いた、そうしてだった。
専門学校を卒業すると桃香はパリに行って自分をスカウトしてくれた店でパティシェとして働きはじめた。櫻良は家の店で働きはじめた。
二人はそれぞれ水を得た魚の様に働きはじめた、櫻良はすぐに作ったお菓子はどれも評判がよくなり桃香は世界中の美食家垂涎の店で賞
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