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開幕の屈辱
第四章

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「というかサヨナラ負けとかね」
「スリーランでな」
「本当に痛い敗北ね」
「このままじゃ阪神の開幕スタートダッシュはないか」
「いや、もう壮絶にこけてるから」
「おい、幾ら何でも壮絶はないだろ」
「実際巨人に三試合で二十点取られてこっちは四点よ」
 得点の差がそこまであったというのだ。
「それで三連敗だからね」
「壮絶か」
「そうよ、本当に巨人に勝ってよ」
「それで二位になれっていうんだな」
「カープが優勝するから」
 千佳はこのことは変わらなかった。
「いいわね」
「やれやれだな、しかしな」
「しかし?」
「逆境を乗り越えてな」
 今のそれをとだ、寿は自棄酒の様にスーパーで売っているペットボトルのミルクティーを飲みつつ言った。一・五リットルのそれはかなり甘い。それを氷を入れて飲んでいてそうしつつクッキーを食べているのだ。
「優勝だな」
「優勝ね」
「絶対にするからな」
「だからカープよ、優勝するのは」
「言ってくれるな」
「言うわよ、というか立ち直った?」
「次があるんだ」
 見れば寿は今は暗黒のオーラに包まれていない、目も普通だ。ふてくされているがそれでもである。
「それならな」
「そうね」
「ああ、ただ何でお前今日阪神が負けたって知ってるんだ」
「さっきスマホで確認したからよ」
「だからか」
「塾行ってたけれどね」
「そういうことか。じゃあ僕もな」
 寿はやれやれという顔になってまた言った。
「お風呂に入って」
「それでよね」
「勉強するか」
「もうちょっとしたら期末テストよね」
「阪神も頑張ってるんだ」
 それならというのだ。
「僕も頑張らないとな」
「巨人戦今の百倍頑張って欲しいわね」
「阪神にはか」
「ええ、それだけ願うわ」
 こう言ってだった、千佳は兄そして両親と共に晩ご飯を食べた。その前に兄は母からご飯前に甘いものを食べない様に注意された。そうしてから一家で晩ご飯を食べたがそれ自体は和やかなものであった。


開幕の屈辱   完


                  2020・6・26
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