暁 〜小説投稿サイト〜
開幕の屈辱
第二章

[8]前話 [2]次話
「しないでよ」
「だから三連勝するのはこっちだって言ってるだろ」
「本当に本当だと思いたいわ」
「何なら嘘吐いたらってやるか?」
「それはいいから」
 また冷めた目になって言う千佳だった。
「三連敗する可能性高いから」
「阪神がか」
「そうよ、絶対に阪神には何か憑いてるから」
 その憑いているものの話もした。
「魔物とケンタッキーのおじさんと甲子園の怨念ね」
「三つもあるんだな」
「それでどうして断言出来るのよ」
「だから嘘吐いたらはしないんだな」
「ホラと受け取っておくわよ」
 嘘でなく、というのだ。
「だからいいわよ」
「随分言ってくれるな」
「毎年のことだからね」
 冷めた口調の返事は変わらない。
「それこそ」
「僕は今凄く不機嫌になったからな」
「不機嫌になったことは謝るけれど本気でわからないから」
 阪神のことはというのだ。
「三連敗しかねないから」
「三試合連続十点差で勝つからな」
「心からそうして欲しいわ」
 この言葉は本気だった。
「それで巨人を叩き潰して欲しいわ」
「お前も巨人嫌いだしな」
「死ぬ程嫌いよ」
「そこは僕と同じなんだよな」
「これまでどれだけ巨人に選手掠め取られたか」
 そのことを思うと、というのだ。
「そのことを思うとね」
「巨人嫌いだな」
「巨人は一億年位最下位であるべきよ」
 千佳はこれまた本音を出した。
「それこそね」
「本当にそうだよな」
「阪神は勝っていいけれど」
 無論カープ意外にだが千佳は阪神がいつもカープに負けていることからこのことは特にどうも思っていない。
「けれどね」
「巨人は、だよな」
「心からそう思っているから」
 だからだというのだ。
「阪神には願っているのよ」
「巨人には勝て、か」
「本当に頼むわよ」
「だから大丈夫だって言ってるだろ」
「その言葉ホラじゃないことを願うわ」
 やはり心からだった、そして。
 開幕となった、例年より三ヶ月程遅れてようやくだった。
 開幕となった、そうして。
 千佳は自分のクラスでクラスメイト達に話した。
「お約束だったわね」
「ああ、阪神ね」
「もういきなりだったね」
「三連敗ね」
「酷かったわね」
「三試合で二十一点取られてね」
 憎むべき巨人にである。
「こっちはたった四点」
「凄かったわね」
「酷い三連戦だったわ」
「去年と全然変わらないわね」
「こんなのだとね」
「それでね」
 千佳は友人達にさらに言った。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ