第8章:拓かれる可能性
第251話「可能性の“愛”」
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「ぁ、ぐっ……!」
緋雪の上半身が地面を転がる。
再生するのは簡単だったが、その意識すらも“破壊の瞳”に注いでいたのだ。
確実に成功させるため、“破壊の瞳”の操作以外は蔑ろにしていた。
そのため、無様とも言える形で転がってしまった。
「雪ちゃん!?」
「だ、大丈夫……!」
葵がそれを見て声を上げるが、緋雪はすぐに再生に意識を割く。
下半身も残ってはいるため、再生はそこまで難しくない。
「それよりも、お兄ちゃんは!?」
再生途中でありながらも体勢を立て直し、緋雪は優輝を見る。
“破壊の瞳”で確かにイリスの“闇”を捉えたとはいえ、倒した訳ではない。
そのため、決して油断はしていなかった。
「(かなり複雑に“闇”が絡みついていたから、物理的にも破壊してしまったけど……少なくとも、これで変化は起きるはず……!)」
司の転移封じの魔法が働いている間に、全員がバインド等で拘束を試みる。
その上で、警戒を怠らずに動きを見る。
「……その様子だと、狂気を完全克服出来たみたいだね」
「うん。吸血衝動も、狂気も、私の根幹から生じる恐怖による副産物だった。……ずっと、それから目を逸らしていたから、その影響として狂気に陥った」
葵が横に並び立ちながら、緋雪がパワーアップした事を尋ねる。
緋雪も優輝から目を逸らさずに簡潔に答えた。
「でも、もう大丈夫。この力でも、誰かを……お兄ちゃんの助けになれるってわかったから。……もう恐れる事なんて、ない」
「……そっか」
緋雪の回答に、葵は満足そうに頷く。
「ァァアアアアアアアアッ!!!」
「ッ……!」
だが、感傷に浸るのはそこまでだ。
バインド等の拘束を弾き飛ばすように、優輝から“闇”が放出される。
「(破壊出来なかった!?……いや、あれは……!)」
「ッッ!!」
「くっ……!」
“闇”が触手のようにうねり、周囲を無差別に薙ぎ払う。
近くにいた緋雪達はすぐさまそれを避け、司や椿がいる所まで下がる。
「暴走……って程でもないね」
「どちらかと言えば、箍が外れたって感じね。制御しきれない訳じゃないけど、さっきみたいな精密な操作は出来なさそうに見えるわね」
それは、例えるならホースヘッドが壊れたようなものだ。
ホース自体はまだ扱えても、細かい扱いが出来なくなる。
今の優輝は、そんな感じになっている。
「でも……ッ!」
司がそう呟いた瞬間、全員がその場から逃げる。
直後、膨大な“闇”がその場所を呑み込んだ。
「出力や威力は先程以上、って訳ね!」
「雪ちゃん!さ
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