三十七 『 』
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中、無梨甚八はカブトを静かな眼差しで見やった。
「も、申し遅れました。あの、この度、医療忍者としてこの部隊に配属されたカブトと申します」
慌てて名乗るカブトを、無梨甚八はどこか値踏みするように見つめると、やにわに口を開いた。
「それは…本当の名、か?」
「……ッ、」
忍びであるが故に偽名を使うことは大いにある。
故の質問だったのだろうが、カブトはその問いに咄嗟に答えられなかった。
何故なら、カブトという名は借り物。
本当の名は、記憶喪失が原因で失ってしまったのだから。
「あ、当たり前じゃないですか」
ハッとして慌てて答えるも、奇妙な間を置いてしまった。怪しまれたのではないかと冷汗をかく。
カブトをじっと見下ろしていた無梨甚八は、眼帯で隠されていない瞳を細めた。
その眼はどこか、青みがかっていた。
結局、無梨甚八は再不斬に呼ばれて、カブトから離れて行ったが、あの瞳の色を、カブトは忘れられなかった。
それから他の国に渡り、岩隠れの里で諜報活動をしていた現在も。
孤児院を出て五年。
もう一度、マザーに会いたかったな。
スパイだとバレて、岩隠れの忍びに囲まれている絶体絶命の状況で、カブトは切に思う。
荒い息遣いを整えながら、そう願ったカブトはこの時、頭上から迫る人物に気がつかなかった。
「…がッ」
クナイが刺さる。
頭上の岩崖から降ってきた岩隠れの忍び。そいつが放ったクナイを避けられず、カブトは苦悶の表情を浮かべる。
振り返り様にチャクラを帯びた手刀で反撃しようとしたカブトは、直後、動きを止めた。
「…えッ、」
厚い雲間から月が覗く。
月光射し込む中で、カブトは眼を見張った。
「そんな…」
己を殺そうとしている岩隠れの忍び。
その顔は今まさに会いたいと思っていた相手だった。
「ま、マザー…!?」
致命傷を負いながら、カブトは叫ぶ。
己に名を、眼鏡を、居場所を与えてくれた孤児院のマザーである薬師ノノウ。
しかしながら会いたかった人物は、非情にもカブトへクナイを振り上げた。
「マザー!僕だよ、カブトだ!!」
襲い掛かってくるノノウへ、カブトは声を張り上げた。
カブトに与えた眼鏡の代わりに新しい眼鏡をかけているノノウは、カブトという名にピクッと反応する。
動きが止まった彼女にホッとしたのも束の間、カブトはノノウの次の言葉に衝撃を受けた。
「────誰なの?」
カブトの顔が見えているはずなのに、ノノウは眼鏡の奥の瞳を冷ややかに細める。
その視線は明らかにカブトを敵視していた。
「カブトの名を
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