願いとは
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クラスメイトの我妻由乃が変貌した、ボロボロの指輪怪人。腕から炎や水を飛ばし、あえてこちらの周囲を破壊して、逃げ場を塞いでいる。
「逃げろ逃げろ! 迷路の出口に向かって!」
由乃だった怪人は、大きな笑い声とともにどんどん爆発を広げていく。彼女が本気ならば、チノはもう十回は木端微塵にされていたに違いない。
「チノっ?」
マヤの声が、息を切らしたチノにかけられる。
「も、もう……ダメです……」
こんなことなら、もっと運動しておけばよかった。迫ってくるアナザーウィザードを振り返りながら、チノはそう思った。
正体が由乃の怪物、アナザーウィザードは、じりじりと歩み寄る。
「ユッキーに触れていいのは私だけ……ユッキーの味方になっていいのは私だけ……!」
首を掴まれ、持ち上げられる。アナザーウィザードのゆがんだ宝石のような顔が、チノに近づけられる。赤い宝石の先に、由乃の狂った眼差しが透けて見えた。
「我妻さん……」
「だから……」
アナザーウィザードの左手に、紅蓮の炎が湧き出る。顔面の皮膚を軽く焼くそれは、より一層の恐怖をあおる。
「おい! チノを離せ!」
マヤがアナザーウィザードの右手にぶら下がっている。だが、同年代の少女の重さをまったく意にも介さない。
「安心して。次は貴女を殺してあげるから」
チノを持ったままの手を振り回し、マヤが振りほどかれた。
「マヤ……さん……!」
アナザーウィザードの首に入る力が増してくる。だんだん呼吸ができなくなる。
もうダメだ、とチノの視界に、アナザーウィザードではなく、父の姿が見えてくる。
「……お父さん……ココアさん……みなさん……」
これまで世話になった人や、関わってきた人たちの顔が矢継ぎ早にフラッシュバックする。走馬燈というのか、とチノが考えた時。
「おらぁ!」
突如、別ベクトルより、アナザーウィザードに力がかかった。
蹴りにより、チノが解放、すさかず別の誰かにお姫様抱っこ、すぐにマヤのところに移動した。
「チノ?」
視界に現れる、涙目のマヤ。彼女の向かい……自分を助けた王子様は、チノも見覚えもある顔だった。
「響さん……?」
「平気みたいだね。チノちゃん」
数日前、ラビットハウスに来ていた、立花響の笑顔だった。だが、その時の彼女とは色々ことなる。耳を機械的なアーマーが装着されており、ウサギの角を連想させるヘッドバンドがあった。
「チノ!」
マヤに抱きつかれるチノ。息苦しさが、本当に自分が生きているのだと教えてくれた。
そのまま、響によって後ろに押しやられる。
「大丈夫。ここは、私たちに任せて、下がっていて」
「ふざけるな!
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