願いとは
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分倫理が破綻しているマスターね」
「随分強く言うな」
「当たり前じゃない。聖杯戦争なんて非条理に参加している時点で、願いなんて愛か命になるのだから。その気がないならなぜ生きているのかしら? アサシン」
「私が知ることではない」
「……」
ほむらとアカメが険悪な空気を流している中、可奈美は静かに少年の瞼に手を当てて蓋をした。
「ほむらちゃん。アカメちゃんも……」
可奈美は、きっと二人を睨む。やがて、アカメの盾になるようにほむらと対峙した。
「こんなに苦しみや悲しみを出して、それで叶えたい願いって何なの? 誰かを犠牲にしてまで叶えることなの?」
「ええ。そうよ」
ほむらは即答した。
「私は願いのために、全てを犠牲にすると決めたの。もう、何も頼らない」
「……キャスターもか?」
「キャスターと私はあくまで互いを利用しあっているだけよ。聖杯に願いを叶えるためには、マスターとサーヴァントの存在が不可欠よ。監視役にもそう言われたでしょう?」
「……」
「でも、その願いを……」
思わず口を挟む可奈美だが、言葉はほむらによって遮られた。
「願いという、人間の欲望を、貴女に止めることなんてできはしないわ。聖杯戦争にいるということは、貴女の願いも他に手がないことでしょう?」
「それは……」
「大概この手の戦いに参加する人は、他に手がない人よ。巻き込まれた松菜ハルトは別にして、正規で参加したマスターの願いは簡単なものじゃないはずよ。貴女もそのはずでしょう?」
「……」
可奈美の拳に力が加わる。
「そうだね……でも、きっと……聖杯戦争以外の方法だって、あるはずだよ……!」
可奈美が弱弱しく訴えた。その時。
『うわああああああああああああああああ!』
可奈美の思考を中断させる、大きな悲鳴が聞こえてきた。
「何?」
唖然とする可奈美の耳に続く、爆発音。それにより、赤黒の空間全体が揺れた。
「マスター」
キャスターが、こちらへ近づいてきた。
「サーヴァントとは違う魔力反応です。おそらく、アサシンのマスターかと」
「そう。……さっきまでの怪物たちとは違うのね」
「はい」
「行かなきゃ!」
可奈美は、千鳥を抜く。白い霊体としての体となるが、全身が重い。
「うっ……」
足元がふらつく。連続の写シと必殺技の使用で、体がもたなくなっていた。
「っ……」
体力が勿体ない。可奈美は写シを解除し、ダッシュで部屋から出ていった。
その背後で、ほむらとキャスターも続く。
ただ一人。アカメが、じっと少年の遺体を見下ろしていた。
マヤに手を引かれるがまま、チノはこの訳の分からない空間を走っていた。
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