六十二匹目
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8月の中旬には学校主催のパーティーが行われる。
僕達が通う学校は貴族の子女が通う学校である。
故に大人になった時の練習、という理由で年数回パーティーが開かれるそうだ。
部活でいう新人戦のような物。
パーティーは3月、8月、12月の年三回開かれる。
そんな訳で7月末。
僕らは母親と共にメリーちゃんの家に来ていた。
アリエーソ商会の本拠地で、物凄く大きい。
その一室で僕はアクセサリーを作っていた。
くーちゃん達は別室で服を選んでいる筈だ。
お母様達はそれを見ているのだろう。
現在この部屋には僕とティアとアリエーソ家の執事さんの三人だけだ。
「ティア。くーちゃんの腕出して」
「はい」
ティアの手がくーちゃんの腕を模す。
その上に手をかざし、周囲に硝子で試作のブレスレットを錬成する。
シンプルなリング状で断面部にはナノサイズの魔法陣、周りには紐を巻いたような装飾を施す。
錬成したブレスレットを摘まむ。
「いいよ」
腕がドロリと溶け、残ったブレスレットを光にかざす。
内部に描いた魔法陣が線になって浮かび上がる。
「このくらいシンプルでいいかな?」
「ええ。クーコ様の好みとしてはそれでよいかと」
「問題はドレスに合うかだね…。はぁ…今やっても結局無駄じゃないか…」
まぁ、これなら普段使いできるだろうし…。
ガラスのブレスレットに魔力を流して一つ目の魔法を発動。
ブレスレットの"装飾部分が"光り、同心円状に魔法陣が広がる。
「その機能要りますか?」
「こけおどしってやつさ」
魔法を使う際、余程の事がない限り魔法陣が浮かび上がる事はない。
だからこの魔法陣を浮かび上がらせる機構は無駄なのだ。
そも浮かび上がる陣は魔法陣ですらない。
魔法陣っぽいナニカだ。
ちなみに古代文字での煽り文句が書かれている。
ちょっとしたジョークである。
そして二つ目の魔法。
本命の魔法障壁。
円環の中の魔法陣一つ一つに魔力が通り、十重二十重の障壁魔法を展開。
「低出力魔法障壁によるクラッシャブルストラクチャー。
そこそこ新しい概念の防護魔法だと思うんだ」
「と、言いつつ五枚置きに通常障壁張ってますよね?
おそらく、メリー様やシャクティ様には使えませんよ?」
「いいの。これはくーちゃん用なんだから」
その後に自分のも含めて四人分のアクセサリーを創った。
試作品ではガラスや金属で作っていた部分を水晶などで置き換えている。
貴金属は元素がないので使わない。
製作が終わり、狐になってティアに体を浮かべて寝ているとひょいと持ち上げられた。
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