第39節「撃槍」
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掛かり、如何な巨大遺跡フロンティアの一部ブロックであっても半壊以上の被害は免れない。
複合構造体の内包する、一体成型の構造体と比較して耐久性が脆弱であるという欠点が、生身かつ重篤なナスターシャ教授の生存を、絶望的なものとしてしまった……。
「よくもマムをッ!」
遠ざかっていく制御室を見上げ、マリアは怒りのままにアームドギアを構える。
「手にかけるのかッ!? この僕を殺す事は、全人類を殺すことだぞッ!」
余裕の笑みと共にマリアに向かい合うウェル。
自分は絶対に殺されないだろうというその図太さは、果たしてどこで買えるのだろうか。
だが、その根拠のない自信は、3秒としないうちに瓦解した。
「殺すッ!」
「ひゃああああああッ!?」
烈槍を向け、ウェルに迫るマリア。
自分に向かって向けられた明確な殺意に、間抜けな悲鳴を上げて腰を抜かすウェル。
マリアの手が、遂に血に染まるかと思われた、その時──彼女は割って入って来た。
「ダメ──ッ!」
「そこをどけ、融合症例第一号ッ!」
「違うッ! わたしは立花響、16歳ッ! ──融合症例なんかじゃないッ! ただの立花響が、マリアさんとお話したくてここに来てるッ!」
「お前と話す必要はないッ! マムがこの男に殺されたのだッ! ツェルトもその男が手にかけたッ! ならば私もこいつを殺すッ! 世界を守れないのなら──私も生きる意味はないッ!」
マリアが握った槍を突き出した、その瞬間だった。
「マリィッ!!」
聴き慣れたその声にマリアが振り向くと、そこには……翔と並んで立つツェルトの姿があった。
「え……ッ?」
その一瞬は、マリアの烈槍の勢いを削ぐのには充分であった。
響はマリアが突き出した槍の穂先を、片手で掴んで受け止めた。
「──お前ッ!?」
「意味なんて後から探せばいいじゃないですか……」
響の掌から血が流れ、ガングニールの穂先を濡らす。
だが、響は笑顔でそう言った。
そして響は、生きる意味を見失ったマリアへとあの言葉を投げかける。
この撃槍を、胸の歌をくれた大事な人から受け継いだ、明日への希望に満ちた言葉を……。
「だから──生きるのを諦めないでッ! Balwisyall nescell gungnir──troooooooooooooooooooonッ!!」
「聖詠! 何のつもりで──」
響き渡る、立花響の胸の歌。
それに応えるかのように、掴んでいた槍が輝き、消える。
「きゃあッ!」
槍だけではない。マリアが纏うギアも輝き、輝く粒子となってブリッジを、そして中央遺跡全体を包み込んでいく。
その光を、フロンティアに集う者達は見上げる。
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