第一章
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猫の母子
東宮千鶴はこの時困っていた、それは何故かというと。
幼馴染で家が近所でありしかもクラスメイトである浜崎大地がクラスで怒ってこんなことを言ったからだ。
「あの猫ぶん殴ってやる」
「あの猫って?」
「学校の倉庫にいるんだよ」
「倉庫に?」
「あっちの方にな」
こう千鶴に言う、見れば茶色の髪の毛をショートにしている大きな目は少し垂れた男の子だ、背は小学四年にしては普通の感じだ。クラスでは評判のやんちゃ者である。
「いたんだよ」
「それでどうしたの?」
「引っ掻かれたんだよ」
大地は千鶴に右手を見せた、見ればその右手には引っ掻き傷がある。
その傷を見せたうえで千鶴に話した。
「これ見ろよ」
「あっ、確かに」
千鶴も見た、黒髪を肩まで伸ばした優しい感じの目の穏やかな顔立ちの女の子だ。背はやや小柄である。
その彼がだ、こう言ったのだ。
「引っ掻かれているわね」
「だからだよ」
「引っ掻いた猫ちゃんに仕返しするの」
「ああ、そうしてな」
そのうえでというのだ。
「すっきりしてやるよ」
「そうするのね」
「放課後倉庫の方に行ってな」
「やり返すの?」
「そうしてやるよ」
こう千鶴に言った、そうして授業を受けていたが。
千鶴は学校にいる間ずっと大地の言葉が気になっていた、それでだった。
放課後大地のことが気になって彼の後ろをそっとつけた、そうしてだった。
彼が校舎裏の倉庫の方に行くとだった、その後についていった。そのうえで倉庫の方に行くとそこにだった。
一匹の子猫がいた、白と茶、薄茶色の三毛猫で毛は立っている。その猫を見て千鶴は思わず前にいる大地に言った。
「ちょっと、まだ子猫じゃない」
「えっ、千鶴いたのかよ」
大地はここで千鶴に気付いて驚きの声をあげた。
「何時の間に」
「心配だからずっと後つけてたの」
千鶴はこのことをここで話した。
「今までね」
「そうだったのかよ」
「ええ、それでだけれど」
千鶴はあらためて言った。
「まだ子猫だから」
「殴るなって言うのかよ」
「そうよ、それ位で」
「違うよ、あの子じゃないよ」
大地は千鶴に眉を顰めさせて言った、見れば子猫は倉庫の隅で寝ている。具合が悪いのかあまり動こうとしない。
「あの子の親だよ」
「親?」
「母親だよ」
その猫だというのだ。
「俺が引っ掻かれたのは、後本当は殴るとかな」
「違うの?」
「野良猫ってそのままだと保健所に送られるだろ」
大地は千鶴に少し怒った口調で言った。
「そうなるだろ」
「ええ」
「そうならない為にな」
「大地君のお家で飼うの?」
「お父さんもお母さんもいいって言ってくれたしな」
「そうなの」
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