六十一匹目
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くしゃく……しゃくしゃく……。
「シラヌイ」
「なに? ボーデン」
「こういうの、タマモ様は何も言わないのか?」
「どれのこと? かき氷?」
「ん。まぁ、そういうの、全部ひっくるめて」
「んー…………」
シラヌイが持っていた器をコトリと置く。
「ねぇ、ボーデン。この国の文化がどういうものかわかるかい?」
「文化? フライハイト式の文化だろう?」
「そうだね。フライハイト式。立派な文化だ。
でもね、ボーデン。僕から見たらこの国の礼儀や文化はしっちゃかめっちゃかだ」
「どこが」
「僕の世界の話をしよう。僕の住んでいた国は大陸から離れた島国だった。
ああ、島国って概念も大陸って概念も馴染みないよね…。
まぁ、ともかく他の国々とは隔絶された国だった」
「だからその日本という国は他の国々とは全く別の文化を歩んでいた。
が、月日は進みやがて他の国々とも交流ができた。
それにより日本には外国文化が流れ込み、国外に日本文化が流出した。
そうして、神話の時代から数えて建国から二千六百年経ったのが僕の故郷だった」
「その時代には他国の歴史を詳細に学ぶことができた。そしてそれは学校教育での必修であり、僕もある程度外国の歴史を学んでいた」
「このフライハイト王国の文化はその外国…僕らの世界ではヨーロッパと呼ばれていた地域の文化に似ている。貴族制度、食文化などだ」
「でも、何故かそこにちらほらと日本式の礼儀や文化がちりばめられている。
なんでだと思う?」
問い掛けられたボーデンは答えられなかった。
そんな事を疑問に思ったことなど無い。
なぜなら当たり前だからだ。
「お辞儀や箸、それに味噌、キモノ…挙げればきりがない。これは日本式の文化だ。
外国にも近い物はあったけど、様式が完全に日本の物だった」
「文化には必ず理由がある。ヨーロッパ式と日本式には気候や地理的要因からくる確たる差があり、それが自然に交わることない」
「なら当然誰かが混ぜたはずだ。誰か?」
「答えは簡単。このフライハイトの建国に関わり今もなお政治の中枢に居る人物。
タマモ・フォン・シュリッセルに他ならない」
「僕と同じ世界の過去から来たお婆様が、この国の文化の礎を築いたんだ」
ボーデンが目を見開く。
「タマモ様が………異世界人?」
「言わなかったっけ? お婆様はこの国をよりよくするため、様々な文化や技術を広めた。
礼儀は統治の時の上下関係をはっきりさせる。
発酵食品や酒造…食文化は統治する人々のコンディションに直結する。
服飾品は体温の維持と文化の促進」
「だからお婆様は、それが良い物であれば異文化を広める事に戸惑いはない。
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