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犬が来てよかった
第三章

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「子供ですから」
「そうなんですね」
「あとその子種類と性別は」
「雑種で雄みたいですね」
「男の子ですね」
「それで名前はありきたりですが」
 こう前置きして紅葉に話した。
「ポチにしました」
「確かにありきたりですね」
 紅葉はその名前に思わず笑った。
「確かに」
「何か他に思いつかなくて」94
 それでというのだ。
「この名前にしました」
「はい、ただ本当に犬を飼うことははじめてで」
 狗飼は紅葉にあらためてこのことを話した。
「何かとです」
「ワンちゃんのことをですね」
「教えて下さい」
「こちらこそ」
 これが紅葉の返事だった。
「私に出来ることなら」
「そう言ってくれますか」
「はい、こちらこそ」
「それじゃあ」
「ポチちゃんも宜しくね」
「ワン」
 ポチと名付けられた犬は紅葉に応えて鳴いた、この日からだった。
 狗飼とポチの生活が本格的にはじまった、紅葉と犬のことで何かと話す日々がはじまり会社でもだった。
 実家のことでぼやくよりも遥かにだった。
「いや、今日も帰ったらです」
「犬の散歩かい?」
「そうなんですよ」
 課長に笑って話した。
「今夜も」
「そうか、それは何よりだな」
「最近居酒屋とか行かなくなりましたけれど」
 それでもというのだ。
「その分です」
「ワンちゃんと一緒にいてか」
「そっちを楽しんでいます」
「随分健康的になったんだな」
「ただうちの犬大きくなって」
「成長したんだな」
「まあ柴犬位の大きさで止まるみたいなんで」
 これは獣医から聞いた話だ、柴犬と甲斐犬の雑種らしくてそれでというのだ。
「室内飼いでいけるそうです」
「部屋で飼えるんだな」
「そのまま、吠えなくなったし懐いていい子ですよ」
 ポチのことを上機嫌で話した。
「本当に」
「そうか、それは何よりだな」
「それで隣の人ともよくお話してます」
 紅葉のことも話した。
「その人も犬を飼っていまして」
「そうなんだな」
「何かとお話しています」
「そのこともいいことだな」
「はい、じゃあ今日も帰って」
「楽しんで来いよ、じゃあ俺も家に帰ったら」 
 課長も笑って話した。
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