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魔王の友を持つ魔王
§40 兄妹喧嘩(偽)
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す!! 絶対の頂点に君臨する、お兄様こそが私の目標! それは、昔も今も変わりません!! 私の全ては、今日!! この時の為に!!」

 掠る。外す。触れる。避ける。

「……これが頂点、か」

 立会人となった馨の目には、視認ギリギリの変態染みた速度で周囲を破壊していく二人に笑うしかない。――――それは引き攣った笑み以外の何物でもないが。

「……権能などなくても、やはり羅刹の君は恐ろしいものです」

 怯えを隠そうともしない剣の師範。剣の王とすらも剣の腕だけならば張り合える、そんな彼ですら目を必死に凝らしてようやくわかる領域だ。

「私でもお二方は回避していないようにしか」

 神速を発動させていないはずなのに心眼でないと捕捉困難。そんな速度での応酬はまさに武の極致と呼ぶに相応しい。避ける気配が全くないのに当たらない。

「いやー。当たり判定が消失してますな」

 やんまーに、などと呟く、あいも変わらず呑気な様子の甘粕だが、声がいつになく硬い。

「世界は広い……」

 師範は未知との遭遇に、恐怖だけでなく感動も覚える。――だがその贅沢が味わえるのはほんの一部だけ。

「これほど、か……」

 大多数が受けるのは恐怖と戦慄。恐れの感情だった。





「はあっ、はあっ…… 武技は僅かにお義兄様が上、ですか」

 隠しきれない疲労を滲ませて教主が言う。

「……いや、なんでついてこれんのよ」

 身体強化を最大限に駆使し行う神速もどきでの戦闘。下手な闘神ですら圧倒する領域なのに当たり前のように追随された黎斗は若干凹む。黎斗優勢の試合運びなのだが、決め手を出せない。絶好のタイミングを、教主の呪風がひっくり返す。攻めているはずなのに、攻めきれない。盤面を支配されているような気もしてくる。

「お義兄さまの義妹として、恥じることの無いように修練に励んで参りましたゆえ」

 何処か得意気に教主は笑う。

「それに私の権能をいとも容易く防ぐとは。流石です」

 感じ入った教主の視線は、黎斗の背後に注がれる。そこには、二体の金剛力士が八匹の雷龍に拘束されている。雷龍は仁王を絞殺せんと、スパークを飛び散らせながら雁字搦めに絡みつく。四匹もの雷龍に拘束された力士は、動くこともままならない。無類の怪力を誇る仁王はこれで完全に封じられた。

「こっちも正直キツイけど。まぁ負けられないかな、と」

 超高密度に圧縮された風の塊を避けて躱すのは一苦労だ。呪力障壁を貫通し、鋼すら破砕する一撃。接近戦をこなしながらそんなものを撃つ芸当すら見せるとは、本当にこの少女は強い。だが女の子相手に無様な所は見せられない、などと俗物染みた思考回路で戦い続ける。

「お義兄様の前では幻惑の術も無効
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