第五十六話 “あの男”の正体
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、モデルVの生け贄を集めるために、狩りを始めおったのだ」
「くそっ、ここぞとばかりにやりたい放題かよ!行こうぜ、アッシュ!グレイ!」
「う…う、うん…」
モデルAの言葉に頷くアッシュだが、声にいつもの力強さがない。
「さっさと行くぞ!アルバートにオイラ達の事を全部吐き出させてやるんだ!その…人助けは…ついでだけどな!…どうした?ビビってるのか?」
「な、何よそれ!このアタシがそんな事…!」
モデルAの言葉にムッとなったアッシュは勢いよく俯いていた顔を上げるとモデルAを掴んだ。
「そうさ、それがオイラの知ってるアッシュだぜ。アルバートがお前の何を知っていようが、お前自身が変わっちまうわけでもないだろ。大切なのはこれからをどうするのかじゃねぇのか?」
「……!」
「オイラと初めて会った列車で言ってたよな。歴史に名前を残してやるって、過去を捨てて、未来に生きるヒーローなんて、最高の物語じゃねえか!」
「…まさかあんたに励まされるなんてね…アタシ…どうかしてたよ。行こう、モデルA!アタシ達の物語はまだ、終わってないんだ!…で?あんたはどうするのグレイ?」
「え?」
モデルAの励ましで持ち直したアッシュは隣で俯いているグレイを見遣る。
「アタシはこれからアルバートを探してぶちのめすわ。あんたはどうしたいの?アタシと一緒に行く?それともハンターキャンプで待ってる?好きな方を選びなさい。アタシはあんたがどっちを選んでも責めないわ」
「僕は…」
「何ウジウジしてんだよグレイ!…人助けはついでだけどよ…アルバートを倒さないとヤバいんだぜ!?」
動こうとしないグレイにモデルAは苛立ちながら尋ねる。
「…無理だ…僕は自分の事も世界の事も何も知らない…そんな僕が…世界の全てを知ってるアルバートに敵うはずが…」
今までグレイは自分の正体を知るために戦ってきた。
レギオンズ本部に来てもそれが叶わず、アッシュのような信念も強さも持たないグレイは精神的に弱っていた。
「…お前の事ならオイラやアッシュが知ってるぜ。ガキの癖に強がりで、意地っ張りで…何の得にもならねえのにどんな奴でも助けようとするアッシュと同じくらいの大馬鹿のお人好しだ!」
「……!」
「あんた少し言い方を考えなさいよ…少なくてもアタシはあんたのことを良く見てきたつもりよ。自分のことも世界も知らない?別に良いじゃない。知らなくてもあんたがあんたであることに何の偽りもないんだから!」
「見えないとこで苦しんでる奴らは放っとくのか!?大した正義感だな!人の命を救うのに理由はいらないってのはありゃ嘘だったのかよ!」
アッシュとモデルAの言葉にグレイはグッ…と拳を握り締めて顔を上げた。
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