赤黒の結界
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助けて見せるから!」
可奈美はサムズアップして、見滝原中学の正門前に立つ。赤黒い水面が波打つ空間は、果たして生身の侵入を許すのだろうか。
写シを解かないまま、可奈美は深呼吸した。
『行くのかい? 衛藤可奈美』
その時、可奈美の脳内に、声なき声が届いた。聞き覚えのない声の主は、校門の上にあった。
「キュウべえじゃない、白い妖精?」
白は半分だけだった。右半分は黒く、左半分は白いクマの人形。だが、可愛らしい表情の白と、不気味な形相の黒は、見るだけで不気味だった。
クマの人形は、ペコリと挨拶をした。
『初めまして。ボクモノクマです』
モノクマと名乗ったそれは、『ウププ』と肩で笑った。
『君も理解している? ここは、他のマスターが作り上げた領地。聖杯戦争に参加しない君には、逃げた方が懸命な場所だと思うけど』
モノクマはずっと笑っていた。だが、可奈美は眉一つ動かすことはなかった。
「私は……マスター以前に、刀使だよ。人を守る仕事なんだから」
『へえ。それで、オマエは結局この状況を作ったマスターと戦うんでしょ?』
「……そうだね」
『ウププ。守ると言っておきながら、コロシアイをする。人間って面白いね』
モノクマは、そう言って校門から飛び降りた。可奈美の膝ぐらいのサイズのモノクマは、静かに可奈美の背後に回る。
可奈美はそれ以上モノクマに構わなかった。ガルーダの声に相槌を打ち、深呼吸する。
「行くよ!」
写シを纏ったまま、可奈美は飛び込んだ。自然を超越した赤と黒が視界に広がっていった。
揺れる赤と黒の水面が、可奈美の後に残されていった。
可奈美を見送ったモノクマは、ただ一人で笑っていた。
『ウププ。衛藤可奈美。この結界で、君がどんな結末を迎えるのか。はたして我妻由乃とどんな結末を迎えるのか、見せてもらおうかな。ウププ』
『あははははは! いっひひひひひひ! うふ! うふ! あはははは! いひひひひひひ! あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは?』
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