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Fate/WizarDragonknight
赤黒の結界
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 ここまで来ると、ガルーダが可奈美に見せたかった物も分かる。むしろ、他に間違い用もなかった。
 学校敷地を天高く覆い尽くす、赤黒の結界。蠢く二色の光は、校内の姿を見せては隠している。あやふやの中で可奈美が目視した中学校の姿は、現実のものとはかけ離れているシルエットに思えた。
 人だかりに近づくほど、彼らの叫び声が聞こえてくる。

「ウチの子は大丈夫なのか?」「何が起こっているんだ?」「あいつに何かあったら、どう責任を取ってくれるんだ?」

親兄弟など、生徒たちの家族だと思われる人々が、それぞれの家族の身を案じていた。

「今、我々も調査の準備を進めています! それまでお待ちください!」
「それまで待っていろっていうの?」
「その間にウチの子に何かあったらどうしてくれるんだ?」

 食い止める警察たちに、人々は語尾を強めに攻め立てる。警備にあたっている警察は汗をかきながら、騒ぎ立てる人々を抑えている。
 可奈美は数秒、千鳥を見下ろした。そして、

特別(とくべつ)祭祀(さいし)機動隊(きどうたい)です! この場から離れてください!」

 人混みをかき分けて、可奈美はそう言った。数人が可奈美を振り向くが、ほとんどの人には聞こえていない。
 警察の前まで押し分けて、警察を含めて全員に叫んだ。

「特別祭祀機動隊です! この現場は、私が受け持ちます!」
「特別……何?」
「アレでしょ? 刀使(とじ)さんでしょ?」
「刀使? ……ああ、半年前の……」
「漏出問題になったアレでしょ? ……どうしてここに?」

 叫び声は、可奈美へのひそひそ声に変わっていった。最初は好奇の視線も含まれていたものだが、やがて険悪一色に染まっていく。
 旗色が悪くなる前に、可奈美は背後の警察に千鳥を見せつける。

「伍箇伝美濃関学院中等部二年、衛藤可奈美です。この場の調査を、私に引き受けさせてください」
「刀使……? そんな要請は出していないぞ?」
「そもそも、なんでこんなところに刀使がいるんだ? 刀使は、中学生や高校生って話じゃなかったか?」

 警官たちが顔をしかめる。ここで説得している時間が惜しく、可奈美は足踏みしている。
 その時。くぐもったような音が聞こえてきた。

「何?」

 可奈美は、結界を見上げる。赤と黒の波の中に、一点だけ黒い箇所があった。どんどん濃くなっていくと思うと、そこから人影が飛び出した。

「え?」

 全身黒ずくめのコートの人影。ゴーグルとマスクで顔を隠しているようだったが、ゴーグルから伺える彼の目には、光がなかった。長くローブがかかった髪には精気がなく、まるで死体が不審者の衣装をしているようだった。
 彼は躊躇いなくナイフを抜き、人々へ襲い掛かる。
 誰も彼
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