第50話 第四四九〇編成部隊
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たんだろうなと、俺は当時の上官たちに同情した。逆に言えば鈍感で鷹揚な指揮官程、爺様は重宝されたかもしれない。上官の望む結果を推測し、敵の動きと戦列、自部隊の火力を冷静に把握して、より効率的で損害が少なくなるよう戦果をあげる。ほかの会戦も同じように早回しで見てみたがだいたい同じだ。指揮下の戦力も爺様の命令を忠実に過不足なく運用できているし、火力投射に関してみれば見事というしかない。だが第三艦隊の査閲時の部隊運用速度に比べると個々の艦艇の動きは相当遅い。敵の砲撃下で運用速度が遅くなるのは当然だが、それでも遅すぎる。
「爺様は練度を火力統制で補うという思考なんだな」
俺は査閲部時代の上官であるフィッシャー中佐開祖の、機動戦術教の狂信者であったので、各艦のあまりにもトロい動きにイラッとした。だが爺様の部隊は命令通り動かして移動中に損害を受けるよりは、自分の目を信じて火力統制をして着実に勢力圏を広げていく方を選んでいる。砲撃の名手という経歴が影響しているのか、ダイナミックではないが効率的に戦果を挙げることに徹している。
となれば求められる編成は大胆な機動戦術をとるようなものではなく、安定性と均一性の高いものであるべきだろう。俺が照明を戻して改めて自分の席に戻ると、再びリストに向き合う。今与えられている二四五四隻の中から、まず艦齢が四〇年を超しているものを別枠とする。その中で既存の独立部隊編制がある事実上の副司令官部隊七一六隻はそのままに、それ以外を規模ごとに並べ替える。そこから巡航艦を二個隊(五〇隻)ばかり抜き出して副司令官部隊に付け替え、残りの一五〇〇隻を二つに分ける。そのうちの一つを最先任艦長の大佐を代昇進させて率いさせ、残りを爺様直卒の部隊とする。
単純に同規模戦力を三つにする形だが、これであればピーキーな機動戦術は無理でも、満遍なく安定した火力投射と一定の艦隊運動を取ることができる。この場合の問題点は、代将(大佐だが准将クラスの戦力を扱うための一時的な昇進状態)に誰を指名するかだが、これは流石に爺様や参謀長と相談する必要があるだろう。
進むべき方針が決まった段階でリストを見つめなおしてみたが、その中に艦種が不揃いな二〇隻ばかりの奇妙な部隊があった。二〇隻といえば規模からすれば『隊』で、辺境の哨戒隊などを別とすれば通常は単一艦種で構成される。なのにこの部隊は戦艦が一隻、巡航艦三隻、ミサイル艦二隻、駆逐艦一四隻と独立した哨戒隊にしてはやや火力が控えめな構成。だがそれらに共通する前歴を見れば宇宙艦隊司令部の意図は明白で、流石に気分が悪くなった。
俺はその『第八七〇九哨戒隊』の艦データを一隻ずつ開いていく。戦艦アラミノス、嚮導巡航艦エル・セラト、巡航艦ボアール九三号……原作ではリンチの戦線逃亡後、エル・ファシル星域防衛艦隊
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