第37節「君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ」
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──これに端を発する月の公転軌道の異常は、米国・国家安全保障局、並びにパヴァリアの光明結社によって隠蔽されてきた。彼らのように政界、財界の一角を専有する特権階級にとって、月の異常は極めて不都合であり、不利益をもたらす事態だったからに過ぎない。そうして彼らは、自己の保身のみに終始した』
フロンティアの機能により、全世界に向けて放送されるマリアの言葉は、リディアン3人娘やUFZの4人にも聞こえていた。
『──今、月は落ちてこようとしている。これが落ちれば、未曽有の災害となり、多くの犠牲者が出るだろう。私は……、私たちはそれを止めたい。だから、みんなの力を貸してほしい。手立てはある。だが、私1人では足りない。全世界の──皆の協力が必要だ。歌には力がある。冗談でも比喩でもない。本当に歌には力が──『フォニックゲイン』がある。大量のフォニックゲイン、全世界を震わせる歌があれば、月を公転軌道上に戻す事が出来る』
迫る危機への現状を伝えながら、マリアは放送を始める前、ナスターシャ教授から世界を救う方法を示された時の事を思い出す。
「月を? 私の歌で?」
『月は地球人類より相互理解を剥奪するため、カストディアンが設置した監視装置。ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動出来れば、公転軌道上に修正可能です……うっ! ごほッ……!』
「マムッ!? マムッ!」
『あなたの歌で世界を救いなさい……』
血反吐を吐きながらナスターシャ教授が伝えてくれた、世界を救う方法。
マリアはそれを実行する為、声を振り絞る。
「目的があったにせよ、私たちがテロという手段に走り、世間を騒がせ、混乱の種を撒いたのは確かだ。全てを偽ってきた私の言葉が、どれほど届くか自信はない……──だが、歌が力となるという、この事実だけは信じてほしいッ!」
そしてマリアは、自らの胸の歌を口ずさんだ。
悪を背負う為ではなく、今度こそ世界を救う為に……。
立ち塞がる現実の只中でなお、世界を救う者となることを望み望まれたのだから。
「──Granzizel bilfen gungnir zizzl──」
世界中の人々が見る中で、マリアはガングニールを身に纏う。
「私ひとりの力では、落下する月を受け止めきれない……ッ! だから貸してほしい──皆の歌を届けてほしいッ!」
そしてマリアは唄い始める。
溢れはじめる秘めた熱情を、鎧う烈槍に血と通して。
(セレナが助けてくれた私の命で、ツェルトが示そうとしていた気高き精神で、誰かの命も救ってみせる。──それだけが、二人の死に報いられるッ!)
『誰が為にこの声 鳴り渡るのか? そして誰が為にこの詩は 在ればいいか? もう何も失うものかと決めた 想いを重ね
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