第37節「君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ」
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の、正体……?」
「魂に関しては未だ謎が多い未開拓の研究分野ですが、何も霊的なものではありません。脳が活動し処理する電気信号と、そこに刻まれた記憶……『想い出』の総体がこそが精神であり魂です」
「記憶こそが、人間の魂……」
「歌や音楽には、聴く者の記憶を呼び起こす作用があるのは知っていますね? この天詔琴には、音を奏でることで他者の記憶を呼び起こし、失われた魂を復元する力があるんですよッ!」
「魂を復元する聖遺物……ッ!?」
あまりに突拍子もないウェルの言葉に、純は度肝を抜かれる。
それは文字通り、生殺与奪の権利を握る事が出来る聖遺物。
殺した人間を自在に蘇らせる事が出来るとしたら、それは……この男に最も渡してはいけない力だ。
だからこそ、飛びかかってやりたい衝動を抑えてウェルの話を聞く。
その中に、奏を取り戻すヒントがあると信じて。
「魂を入れる肉体はどうした? 肉体が無けりゃ、魂が復元しても意味がないだろうが」
「水35L、炭素20s、アンモニア4L、石灰1.5s、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素……」
「……は?」
「僕がまだイェールに在籍していた頃、とある秘密結社で小耳に挟んだ人体の錬成方法です。ホムンクルス、でしたかね。自我の存在しないまっさらな人体……そこに風鳴翼の歌と記憶、彼女の周囲に残留し続けていた電気信号から復元した天羽奏の魂を入れることで、彼女はこの世に蘇ったんですよッ!」
「ホムンクルスって……オカルトの存在じゃないのか!?」
「ふふふ……オカルトの中にこそ真実があるッ! この異端技術の存在に確証を得た僕は、ついに実現したのさッ!」
つまり、話を纏めるとこうだ。
天詔琴には“魂”と呼ばれる存在を復元する力があり、翼の周囲には奏の残留思念とも言うべきものが漂っていた。
ウェルはその残留思念を天詔琴の力で復元し、奏の魂としてホムンクルスに宿す事で復活させたのだ。翼の歌とそのフォニックゲインを鍵として。
「おいおい、話が長すぎやしないか?」
そこへ如何にもかったるそうに口を挟んだのは、当の奏本人だ。
「あたしは戦いたいんだよ……いいだろ?」
「ええ。その為に私はあなたを呼んだのですからねぇ」
ウェルの方を振り返りながら、奏は好戦的な笑みを浮かべる。
「奏さん……ッ!」
「お前がどこの誰だかは知らないが、せいぜいあたしを楽しませてくれよ……なぁッ!」
「──ッ!」
突き出された槍を、すんでのところで回避する。
そのまま横薙ぎに振るわれた槍を盾で弾き、バックステップで離れる。
「へぇ……やるじゃないか。面白いな、お前」
「く……ッ!」
奏の槍のレンジ外
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