我妻由乃
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いた。
「うわっ! な、なに?」
幸輝はマヤの出現に動転し、手玉のように携帯が両手の上で踊った。
「条河さん……何?」
「お前いっつも携帯いじってるけど、何やってるのかなって」
マヤが幸輝の肩に体を乗せて携帯画面に注目している。止めるべきか見届けるべきか悩んでいると、マヤが実況した。
「お? これって、観察? すげえ、周りのことよく見てるじゃん! 私の接近には気付かなかったけどな!」
「ちょっと、放してよ……」
「えー? いいじゃん!」
「マヤさん、困っていますよ?」
さすがに見ていられなくなったチノが、マヤを引き剥がす。
「ごめんなさい。天野さん。マヤさんには私がしっかり叱っておきますので」
「チノが私の親代わりに?」
「ああ、いいよ別に」
幸輝は愛想笑いで返した。
だが幸輝はそのまま、何事もなかったように携帯をポチポチと打ち始めた。
「でも天野さん、本当にいつも何しているんですか? 私が言えたことではありませんけど、ずっと一人ですよね?」
「僕はいいんだ。僕はこうして、一人で日記をつけていれば」
「日記ですか?」
「へえ。それ日記なんだ」
チノの手から逃れたマヤが、また幸輝のもとに接近する。
「ちょっと見せて!」
マヤは躊躇いなく、幸輝から携帯を取り上げた。
「うお! 打ち込み早くね? もうウチらのこと書かれてる! チノのこと銀髪美少女って書いてある!」
「ちょ! 書いてないよ!」
「……見せてください」
思わず口から本音が出てしまった。あわわと両手を振る幸輝を尻目に、チノは昔のタイプの影響に目を凝らす。
「『隣の香風さんが、条河さんと話してる。奈津さんはまだ来ていないみたいだった』……私のことを美少女って書いてないじゃないですか」
「もういいだろ? 返してよ」
幸輝が、チノの手から携帯を取り返した。
チノはそのまま、幸輝に尋ねる。
「天野さん、日記、ずいぶんいろんなことが書いてありますけど、天野さんのことは?」
「ぼ、僕のことはいいだろう? どうせ僕のことなんて、誰も見ていないんだから……」
「そうですか?」
「そうだよ……全く」
幸輝はため息をついて、逃げるように教室から出ていく。
「僕に構わないでよッ……」
そのまま逃げていく彼に対し、マヤが「あ、待って!」と追いかけていった。
「はあ、はあ、はあ……」
屋上近くに逃げてきた幸輝は、肩で呼吸しながら、近くに誰もいないことを確認していた。
朝の空に続く屋上扉の他には、隣の掃除用具入れしかない。幸輝は安心して、しゃがみこんだ。
「全く、僕に構わないでよ……」
背中を屋上へのド
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