第15話 泉美の初陣と、神聖なる拳の者:後編
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女に高嶺は言葉を返す。
「ええ、この戦いは既にボクシングではありませんから、持てる手は使って戦うのは戦士として当然の心得でしょう」
「確かに……」
その高嶺の意見には泉美も同意する所であるのだった。彼女も持てる力を以て戦うのは立派な戦術であるのだから。
それに……既に彼女は持てる力を以てというのは『実行中』であるのであるし。
こうして、上空にも逃げ場が無くなった泉美は意を決して次なる手に出るのであった。
泉美はカルラノカブトに急旋回を促し、敵を翻弄すべく動き出したのである。
「そんな小細工が通用すると思っているのですか?」
だが、高嶺は冷静であった。ボクサーとして洗練された彼は、それだけに留まらずに戦士としても優れているのだった。
そうして彼は再び敵を風の鎌の餌食とすべく右腕を構えて臨戦態勢へと入るのであった。
しかし勿論、泉美とてこれだけで自分が優位になれるとは思ってはいなかったのである。
急旋回を行ったカルラノカブトは、そのまま狙いを敵機へと向けるのであった。
「そのまま突っ込むのですか、それは悪手だというものですよ」
そう言って高嶺は迎撃をしようとしているが、それよりも前に泉美は行動を起こすのであった。
彼女は、自身の愛機の鳥型になっている頭部の一部分を変形させたのである。それは、くちばしを尖った螺旋状の物へと変化させるというものであった。
その瞬間、泉美は高らかにその攻撃の名前を口にする。
「喰らえ、ドリルくち──じゃなくて、『ラプタードリル』!」
「今ドリルくちばしって言おうとした!?」
それは言い掛けであったが、感性に優れた千影がそれを見逃しはしなかったのであった。
そんな仕様もないない空気の流れとなってしまったが、泉美が攻撃に転じた事には代わりはなかったのである。
彼女は鳥型の愛機にドリル状のくちばしを即席で作り出し、それを用いて地上の敵機へと攻撃を繰り出したのである。
それを目の当たりにした高嶺は、すかさずそのくちばしを機体の両の手で以て掴んだのであった。
その姿は正に……。
「白刃取り!?」
その手の技術を持った千影はそう叫ばずにはいられなかったのであった。それ以上に相応しい例えが今この場には存在しなかったからである。
ボクサーでありながら侍が行うような防御方法を咄嗟に取る辺り、彼の実力はボクサーの範疇には留まっていないという事なのであろう。
その臨機応変な戦法を取る高嶺に対して、端から見ていた千影は思わず舌を巻く所であるのだった。
「やっぱり、この人は手強い相手よ。どう出るのかしら、泉美」
そう自身の友に対して健闘を祈る千影を尻目に、泉美の攻撃は続いていた。
だが、それは敵の手の内がドリルの回転により摩擦で火花が散っているという激しい状態で
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