第11話 八雲泉美のガラホな日常
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れる画面を触りながら読む為に煩わしさがあるが、ガラホならば画面部分とキー部分とが分かれており、ここでもその仕様が役に立つという寸法なのであった。
その快適なガラホを用いての読書で以て彼女は午前の休憩を利用して『人間失格』を読み終えたのであるが。
(う……ん)
彼女の心は全くを以て快適とは程遠くなってしまったのであった。
(国語の先生が言っていた通り、これは怖い小説だったわね……)
ここまでも鬱になる小説もそう多くはないだろうと泉美は思うのであった。どうりでこれは学校の教材として扱われるケースが少ないのだと泉美は納得する所だった。
そんな、胸の内にモヤモヤがコールタールの如くこびりついている状態の所を、丁度良いタイミングで彼女の新しい友人である稲田姫子が通り掛かったのであった。
それを見て彼女は頭の中を支配していた暗雲の中に光明が差し込む心持ちとなったのだ。
「あ、姫子さん。ちょっと読んでた小説で気分がメランコリーな事になっちゃってたから……今日も一緒に昼食を食べましょう」
そう、彼女はこの憂鬱な気持ちを、何かと人なつっこい姫子と過ごす事で解消しようと思ったのだった。
動機は些か不純なものがあるだろうが、友達からの誘いに断る理由もないだろう。特に姫子となれば。
「うん、勿論いいよ、泉美ちゃん♪」
こうして姫子は四の五の言わずに誘いを承諾してくれたのだ。
そして、泉美は思う。今ではこうして便利なガラホ位、いやそれ以上に掛け替えのないものを自分は手に入れたのだと。だから、それを彼女はこれからも大切にしていこうと心に誓うのであった。
【余談】
ちなみに泉美はガラホでインターネットはやっていなかったりする。
それは、彼女の料金プランが一ヶ月の間に一度でもネットをやると4000円上乗せされるというものだからであった。
4000円払えばそれで使い放題な訳であるが、ケータイでのネットでは限界がある所が数多くあるので、それならパソコンでやった方がいいだろうと彼女は考えた次第である。
八雲家は名家故に金持ちなのであるが、元来の貧乏性により、彼女は極力使いたくないと考えるのであった。
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