第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第31話 白の侍と黒の機士:後編
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けた。
その情け容赦なさは武士道に反するかも知れない。
だが、勝負とは非情なものなのだ。ここぞという時に情に捕らえられてしまっては、勝てる勝負も勝てないのである。
その妖夢の宣告を聞きながら、勇美は覚束ない足取りでその身を起こした。
「勇美さん、悪く思わないで下さいね」
「ええ、遠慮する必要はありませんよ」
流暢な物言いで妖夢に返す勇美。だが、その言葉とは裏腹に彼女は満身創痍であった。
「では、いざ尋常に!」
そう言って、妖夢は新たなスペルカードを取り出し宣言した。
「【樹符「天空之塔」】!!」
その宣言を終えると、妖夢は楼観剣をスペルに含まれる文字が示すかのように、天に向けて掲げたのだ。
すると、刀に光の粒が集約していき再び刀身は極光に包まれた。
芸がないかも知れない。そう思われるかに見えたが、実際は違った。──光を纏った刀がロケット花火のそれを大規模にしたかのようなエネルギーの放出を始めたからだ。
そして、みるみる内に高度を上げていったのだった。
気が付けば、その光の束は空高くそびえ立っていた。それはまさに『塔』であった。
「凄い……」
そう勇美は呟く。自分自身の絶体絶命の危機だというのに、ただただ感心するしかない程であったのだ。
「どうですか、天空の塔は?」
そう言ってのけた後、妖夢は流暢にこのスペル誕生の経緯を説明し始めた。
──それは、自分が庭師を務める最中に思い立ったという事だ。
彼女は白玉楼の庭の木の手入れを楼観剣で行っていたのだ。そしてそれは冥界に存在する木々なのである。
つまり、冥界の霊力を蓄えた木々から長い時間を掛けて楼観剣に力を分け与えて貰う形となっていたのだった。
長い時間を掛けた蓄積の賜物。それが今妖夢が繰り出そうとしている『天空之塔』であった。
そして、ますますその存在感を膨れ上がらせていく光の塔。この攻撃をまともに食らえば勇美はひとたまりもないだろう。
だが、勇美はそう簡単には攻撃を許す気は当然なかったのである。
(でも、どうしたら……)
それが問題であった。この妖夢の渾身の一撃の回避は困難であろう。
(仕方ない……)
そこで勇美は腹を括る事にしたのだ。この試みははっきり言って邪道であるし、第一成功する保証は全くないのであるが。
しかし、勇美にはもう『これ』しか方法は残されていなかったのだ。それに彼女は賭ける事にしたのだ。
そして勇美はおもむろに口を開く。
「ところで妖夢さん」
「何でしょうか?」
突然勇美に話しかけられて、妖夢は首を傾げる。
だが、それは両手に光の塔を携えながらの事である。その状態で受け答えする妖夢の表情は固くなっていた。
──これは狙い通りかも知れない。勇美は自分の読みがいい方向性を突いてい
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