第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第30話 白の侍と黒の機士:前編
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にいらっしゃいました……あ、妖夢さん。この間はどうも」
「鈴仙さん、こちらこそ」
迎えに出たのは鈴仙であったようだ。
「それではお二人様、こちらへどうぞ」
そう言って鈴仙は二人を案内するのであった。
◇ ◇ ◇
そして場面は永遠亭の大食堂となる。
「ようこそ永遠亭へ」
そう言葉を発したのは永遠亭の主である蓬莱山輝夜であった。容姿に見合った人懐っこい笑みを湛えている。
「どうぞ空いている席へお掛けになって」
と輝夜は妖夢と幽々子に促した。
「では失礼します」
「お言葉に甘えさせて貰いますわ〜」
そうして二人は手頃な席へ付くのだった。
◇ ◇ ◇
そして永遠亭の住人と冥界組の二人は話に華を咲かせていった。
それは互いの住まいでの生活はどうとか、うちの従者はどうだとか、最近の幻想郷はどうだとか他愛もない内容であった。
そんな中で依姫はさも何気なさそうにこんな話を切り出した。
「今宵は折角の催し物なのに、上等な月のお酒を用意出来ないのは残念ですよ」
「まあ、それは何故ですの〜」
それに対して幽々子は暢気に聞き返した。
「それは以前、不覚ながら『何者か』にお酒を盗まれましてね。そのような事を許すなんて私も修行が足りないわね」
聞かれて依姫はそう返した。いつになく真剣な表情で。
「それは災難でしたね〜」
あっけらかんと幽々子は振る舞った。だが彼女は少し失念したようだ。依姫程の慎重な者がむざむざ気安く自分の失敗話を他人に事に対して。
「……そろそろ本題に入ってはどうですか?」
依姫の切れ長の眼が一際鋭くなったかのようであった。
「……ええ、気付いていらっしゃったようね」
さすがの幽々子も、もはやとぼけ切れないと悟り、真剣な表情を見せる。
──かつて月との勝負で最終的に決定打となった『月の酒を盗む』行為を行ったのが自分である事が明白である事を認めたのだ。
「でも、何故私だと分かったのかしら?」
「それは浄土である月に紛れ込める幻想郷の有力者は限られているからよ」
八意様の入れ知恵のお陰もあるけどね、と依姫は付け加えた。
「……それで、私が犯人だと分かって、どうするつもりかしら?」
「さあ、どうしてくれようね……?」
そのように依姫と幽々子の雰囲気がただならぬものになったのを察して動いたのは──妖夢であった。
「ま、待って下さい!」
ガタンと椅子から跳ね上がった彼女に対して皆の視線が集まる。
「妖夢?」
突然の従者の振るまいに幽々子は何事だろうと首を傾げた。
「主人の不手際は私が責任を取るべきです! だから責めるなら私を責めて下さい!」
それは失態を庇うという、侍らしい高潔な心得であった。
そんな妖夢に続くかのように動くもう一人の者がい
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