第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第28話 レイセン一世:後編
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鈴仙の今の事を気遣う依姫の言伝により、勇美は鈴仙と戦っていたのだ。
そして、鈴仙は勇美が造りだした要塞から生える触手に追い込まれていたのだった。
(こうなったら……)
と、この状況を打破するために鈴仙は考えを巡らせた。
そして鈴仙は──懐から出したスペルカードを宣言した。
「【狂視「狂視調律」!】躍り狂いなさい、忌まわしい触手ども!」
そう鈴仙が言ってのけると、彼女の瞳が一際赤く光り、更に彼女の背後に漫画で書いたような造形の巨大な真紅の眼が浮かび上がった。
そこから何やら不可視の波動が発せられ、空気の流動が勇美の陣地を襲った。
それを身構えながら目をつぶっていた勇美は流動が過ぎ去ると目を開けた。
(あれ? 何ともない?)
勇美は何事も起こっていないと判断すると、拍子抜けすると共に安堵した。
だが、何もないならないでチャンスだと踏んで攻勢に出ようとする。
「まあ何であれ、今よマッくん! その触手でやっちゃって!」
勇美は自らの相棒に呼び掛け、目の前の敵である鈴仙に向けて指を指す。
だが、勇美はそこで異変に気付いた。
「あれ? マッくん? 何かおかしい」
「気付いたようね」
鈴仙は口角を上げて笑みを浮かべた。
そして鈴仙が指を鳴らすと──触手が自らの主人である勇美に襲い掛かったのだった。
「ええっ!?」
間一髪で触手の一振りをかわす勇美。そうして慌てふためく勇美に鈴仙は律儀に種明かしをする。
「これがイリュージョンシーカーの力よ。それを受けた者は例え機械であっても幻惑によって狂うのよ」
「そんなっ……!?」
触手の攻撃をかわしながらも勇美は驚愕してしまう。
「参ったね……咲夜さんもこういう苦労をしたんだね」
勇美はかつて咲夜が月で依姫に自らのナイフを自分に飛び交わされた時の光景を思い返しながら愚痴た。
「どう? 私の狂気の味は?」
そんな思いを馳せながら回避行動に勤しむ勇美に、鈴仙は憮然とした態度でのたまう。
(……)
その様子を端から見ていた依姫は、興味深い心持ちとなっていた。
(今の鈴仙……。かつての貴方とは違うわね。何と言うか、迷いが無いわ)
それが依姫がこの勝負の経過を見てきた中で抱いた切実な感想であった。
「はあ、参ったなあ〜」
そんな達観した依姫の事はいざ知らず、勇美は切羽詰まった様子である。
「な〜んちゃって♪」
──否、切羽詰まった様子に『見えていた』だけのようであった。
「それってどういう──?」
鈴仙が反応するや否や、勇美は事も無げに言ってのけた。
「『スキッドテンタクラー解除』!」
そう勇美が唱えると、要塞から生えていた触手が録画映像の逆再生の如くみるみるうちに体内へと引っ込んでいったのだ。
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