第36節「戦場にセレナーデを」
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埒が明かないと判断した調は、響と翔を交互に見る。
「あなたたちは先に行って……ツェルトと、それにあなたたちなら、きっとマリアを止められる──手を繋いでくれる」
「調ちゃん……ッ!」
「調……ッ!」
「わたしとギアを繋ぐLiNKERにも限りがある……だから行ってッ! ──……胸の歌を……信じなさい」
その一瞬、調の赤い瞳が金色に染まっていたように見えた。
翔と響の脳裏に“彼女”の最期がよぎる。
この言葉を知っているのは、あの時、あの場に居た彼女と自分達だけだ。
「…………うん……ッ!」
「…………わかったッ!」
進もうとする二人。そこへ、ツェルトがアタッシュケースを投げる。
「翔、持っていけッ!」
「これ……」
「俺のはエアキャリアから取ってくるッ! 生弓矢は十中八九、ウェルの野郎が持っているッ! 奴を探して奪い取れッ!」
「ああ、大事に使わせてもらうぜッ!」
アタッシュケースを受け取り、走り出す翔と響。
「調……切歌を頼む」
「うん……任せて。ツェルトはマリアをお願い」
「当たり前だ……ッ!」
本当は自分も切歌を説得したい。だが、今自分が最も駆けつけなくてはならないのはマリアの元だ。
調からマリアを任されたツェルトもまた、バイクを方向転換させると、翔達とは別の方向へと走りだす。
「させるもんかデスッ!」
先へ進もうとする翔と響に攻撃しようとする切歌。
だが、そこへ調のα式が飛ぶ。
「ダメ」
「調! なんであいつらを!? あいつらは調の嫌った偽善者じゃないデスか!」
飛来した丸鋸を、鎌を回して弾いた切歌は調に疑問を投げかける。
「でもあいつは……自分を偽って動いてるんじゃない……。動きたいことに動くあいつが、まぶしくて羨ましくて……少しだけ信じてみたい……ッ!」
調はヘッドギアのツインテールから、丸鋸付きのアームを展開しながらそう答えた。
その目に宿る強い意志に、切歌は納得せざるを得なかった。
「さいデスか……。でも、アタシだって引き下がれないんデス……ッ! アタシがアタシでいられるうちに、何かをカタチと残したいんデスッ!」
「切ちゃんでいられるうちに……?」
月を見上げながら叫ぶ切歌。
その胸にもまた、譲れない思いがある。
「調やマリア、ツェルトやマムの暮らす世界と──アタシがここに居たって証を残したいんデスッ!」
「それが理由?」
「これが理由デスッ!」
調のギアの足裏から、ローラーが展開される。
対する切歌の鎌も、刃が3つに分割された。
「フッ!」
〈切・呪リeッTぉ〉
「はあッ!」
〈γ式・卍火車〉
紅と翠、ぶつかり合う二つの刃。
二人の旋律が重なり合い、調べ歌が鳴り
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