桜!
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わっ!」
「ごめんなさーい!」
そう言って走り抜けた風の正体は、同じ高校の制服を着て、黒いタイツを履き、黄色のヘアピンを付けた栗色の髪の女の子だった。
あ、水色のリボンってことはあの子も1年生なのかな。
っていうか何で急いでるんだろう?
SHRは8時40分からだからまだ余裕があるのに。
...っと思ったら今度は白い野良猫に夢中だ。
そそっかしい人だなあ。
そんなことを考えながら歩いていると、
「なぁ、君、桜が丘の新入生?」
「わっ!っはい!」
呆気に取られる中、松ヶ崎橋の先で今度は男子に話しかけられた。振り返ると厚い胸板が視界を遮る。
「俺も1年。一瀬 正(いちのせ ただし)よろしくな」
「僕は細見 奏(ほそみ そう)こちらこそ」
短髪で少し目つきの鋭い彼は、僕より15cmは身長が高い。
180cmくらいあるのかな。カッコいいなあ。
なんかスポーツとかやってたんだろうか。
「折角だし一緒に行こうぜ。"ほそみん"は部活決めた?」
「"ほそみん"!?」
「ごめん、しっくりこなかった。奏って呼ぶわ」
「急接近過ぎてびっくりだけど、"ほそみん"よりはいいや...ううん決めてないよ」
「じゃあさ、軽音部入らない?俺中学の頃からドラムやっててさ、高校入ったら絶対バンド組もうって決めてたんだ」
てっきり運動部かと思ったけど、なるほどドラムか。すごく似合う。
「軽音部かあ。僕もいつだか親戚にもらったギター少しだけ弾いたことあるよ」
「ほんと!?じゃあ決まり!」
一瞬、決めてしまっていいんだろうかと思ったけど、どんな部活に入るかが大事なんじゃなくて、一生懸命何かをすることが大事なのかなとふと、思った。
「うん」
この縁を大事にしてみよう。
何故だかそう思った。
AM8:10
修道院駅の踏切を渡り、交差点を過ぎて、白川通りを真っすぐ進むと間もなく、桜が丘高校が見えた。
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舞う桜の花びら、桜色の飾り付けのされた白い看板に入学式の文字、正の頬も心なしか桜色に染まって見えた。
「奏!クラス分けの掲示板向こうみたいだ」
「うん」
昇降口の前に人だかりが見える。
「正、見える?」
「ん−、ちょっと遠いな」
「僕、ちょっと潜り込んで見てくるよ」
「奏は背小さいしな」
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