暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第82話『キャンプ』
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
魔術部の部室ではなく、ただの調理場。当然一般人の目がある。迂闊に魔術を使ってはいけない。


「…今の見られてないよね」

「…だな」


辺りを見回し、誰もこちらを見ていなかったことにホッと一息。危ういところだった。
とりあえず何事も無かったかのように、きちんと着火器で火をつける。



そしてそのままカレー作りは順調に進み・・・


「最後にルーを加えて、後は煮込む!」


鍋の蓋を閉めて、ようやく晴登は大きく息をついた。ご飯の方ももうすぐ出来上がるようなので、これで後は待つだけである。
わかっていたことだが、人に指示するのってやっぱり大変だ。自分で作る方が余程気楽である。でも、


「お疲れ、三浦君」

「柊君こそ。いや〜完成が楽しみだな〜」


狐太郎に労いの言葉をかけられ、晴登もお返しする。
そう、これは晴登1人が作ったものではなく、皆で作ったカレーだ。だからこその、楽しみと喜びがある。

しかし、狐太郎の表情はあまり明るくない。


「どうしたの? 柊君」

「…僕、こんな風に皆とカレーを作ったりするの、初めてなんだ」

「え、そうなの?」

「小学校の頃から不登校だったから、今までキャンプとか行ったことないんだよ」

「あっ…」


俯きながら語り始める狐太郎に、晴登は何も言葉を返せない。薄々わかってはいたが、本人の口から告げられてしまうと、やはり心苦しい事実である。


「今回の林間学校も、三浦君に誘われなかったら参加してなかったと思う。行ってみたいと思ってたけど、一歩が踏み出せなかった」

「でも、来てくれた」

「…うん。三浦君が一緒なら、大丈夫だろうなって」

「そ、そっか、それなら良かった」


はにかむ狐太郎に、晴登は頬を掻きながら答えた。気恥ずかしくて、ものすごくムズムズする。こんなの柄じゃないって思うのも、もう何度目だろうか。

彼なりにいっぱい悩んだのだと思う。クラスメイトのこともその他の人のことも、信用していない訳じゃないはずだ。それでも、彼の中に根付く何かが邪魔をしていた。

だから、これだけは伝えておかないといけない。


「絶対、忘れられない想い出にしよう! 最高の林間学校にするんだ!」

「三浦君…」


月並みな言葉ではあるが、これは晴登の本心だ。今まで彼が参加できなかった分も全部、今回の林間学校で彼に想い出として届けてあげたい。


「そのためなら、俺にできることは手伝うからさ」

「うん…ありがとう!」

「ちょっ!?」


感極まったのか、涙を浮かべながら狐太郎は晴登に抱きついてきた。予想外の行動に、晴登はどうすればいいか戸惑ってしまう。
いや待ってく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ