第35節「わたし達に出来ることで」
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。
ただ……夢を見ていた事だけは覚えている。
「マリィが……泣いていた……」
夢の中で、マリィが泣き叫んでいた。
俺が何度手を伸ばしても、その手は届かなくて……そして次の瞬間、誰かに背中を押されたような気がする……。
あの声といい、あの手といい……まるで俺を励ますような温かさは……。
もしかすると、セレナが俺を守ってくれたのかもしれないな。
──とにかく、まずはあいつらと話さないと……。情報の共有を……。
ベッドから降り、着替えようとしたその時……
「な……何してるんですか……?」
振り向くとそこには……二課の制服を着た、気の弱そうな女性が立っていた。
ff
その頃。二課仮設本部ネオ・ノーチラスはフロンティアの浮上に巻き込まれ、大陸の片隅に打ち上げられた状態となっていた。
「下からいいのを貰ったみたいだ」
「計測結果が出ましたッ!」
友里は、藤尭が計測を終えたデータをモニターへと回し、報告する。
「直下からの地殻上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込むことで──」
「フロンティアを引き上げたッ!?」
「はい、それだけでなく、月の公転軌道にも影響が……ッ!」
弦十郎を始め、緒川や了子までもが驚いて口を開けた。
「ウェルくん……これがあなたの言う“英雄”の姿なのね……」
「奴らの目的が何であるにせよ、フロンティアを止めねばならない……クリスくん、純くん──いけるか?」
「ったりめぇだッ!」
「無論です」
クリスと純は包帯を外し、ブレスレットを嵌め直す。
「──クリスちゃんッ!」
「心配すんな。あたしはもう、独りじゃねぇよ」
自分を案じて声をかける響に、クリスは微笑みながら答えた。
「行ってくるよ」
「ああ。健闘を祈る」
翔は純と拳を突き合わせ、笑みを交わした。
そして、赤き装者と白銀の伴装者は共にハッチへと向かい、出撃していった。
ff
「──というわけで、俺はエアキャリアから落とされることになったわけだ」
俺は着替えながら、彼女にここまでの経緯をかいつまんで語った。
その職員は、話してみればとても人の善い性質をしていた。
どうやら、眠っている俺を見張る事を任された職員らしい。
さっきまで見張っていた職員と交代したところで、起きた俺と出くわした……という事らしい。
あまり厳重な体制でない辺り、信用されている……という事だろうか?
「──そう……翔くんの友達なんだ」
「友達って程じゃない。ただ、アイツは俺に道を示してくれた。だから信じただけだ」
「でも、翔くんと君って、似た者同士だと思うよ?」
「どういう事だ?」
着替え終えた俺は、義手を着け直しながら首を傾げる。
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