第35節「わたし達に出来ることで」
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の済むまで泣いてなさい。帰ったらぁ〜、僅かに残った地球人類をどう増やしていくか、一緒に考えましょう」
遂に心が折れ、嗚咽と共に泣き崩れるマリアを見下ろして、ウェルは外へのエレベーターへと向かって行く。
「そうそう、愛しのツェルトくんですが……彼、もうこの世には居ませんよ」
「え…………?」
信じられない。そう言いたげなマリアの顔を振り返り、ウェルは口元を吊り上げた。
「最後まで僕の夢を邪魔しようとしてましたからねぇ。あんな駄犬、手元に置いておくだけ危険ですし」
「そんな……ツェルトが、死んだ……?」
「ええ。今頃は波風に吹かれ、海の底に沈んでるんじゃないですかねぇ〜。懺悔しながら弔ってあげれば、彼も満足するんじゃないかなぁ」
ウェルの言葉は、マリアの心を深く抉った。
(私のせいだ……。私が悪を背負おうとなんてしなければ……私が道を外れたから、ツェルトは私の代わりに正義を為そうとして……ッ)
妹が目を覚まさなくなって以降、ずっとすぐ傍で支えてくれた少年。
心が弱い自分を守ってくれた彼。寄り添ってくれたパートナー。
そして、今更ながらようやく気付いた……大切な人。
今、世界で最も自分を愛してくれた存在はと聞かれれば、彼女はきっと彼の名を挙げるだろう。
……だが、そのツェルトはもう、この世に居ない。
幼い頃、彼女のヒーローになると……読み古したコミック本を片手に語った彼は、自分の与り知らぬところで命を散らしていた。
その報せが、マリアの折れた心に更なる絶望を群がらせていった……。
「うぅ……あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「では、僕はまだやることがあるので失礼しますよ。僕が最高の英雄になる為の、最後のピース……うひょひょひょひょひょ……楽しみだなぁ……ッ!」
ウェルの姿が階下へと消えていく。
残されたマリアはただ泣き叫ぶのみで、ブリッジには彼女の慟哭だけがこだまし続けていた……。
「……マリィッ!」
飛び起きると、白い天井が見えた。
見回せば見慣れない部屋……どうやらどこかの医務室らしい。
「っ……助かった……のか……?」
ベッド脇のモニターには、ヘ音記号の下に『S.D.A.U』と書かれたエンブレムが表示されていた。
どうやら俺は、特異災害対策機動部二課に助けられらしい。
ウェルの野郎にエアキャリアから落とされた俺は、迫るノイズを前に死を覚悟した。
でも……俺は諦めきれなかった。
声が聞こえたんだ。どこか懐かしくて優しい声が、諦めないで……って。
だから俺は、血反吐を吐きながら起動したエンキドゥでノイズを全て迎撃し、海へと落ちたわけだ。
その後の事は覚えていない
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