7-1話
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」
「真理谷!?」
真理谷は小柄ながらに引っ張る力は強く、間一髪のところで石の雨から逃れた。
そのままオレを引っ張っていき、連中の視界の外へと走った。
背後に聞き取れない罵声を受けながら、途中で遅れてきた大森さんと合流して脇目を振らず逃走する。
そのままオレ達は近くの森の中へと逃げ込んで身を潜める事にした。
「はぁ……はぁ…」
「はぁ、ふぅ……どうやら、追ってくる様子はないようだな」
飛行機の方向からは見えないように身を隠した木陰から顔を出して窺う真理谷はそう呟いた。
「はぁ…はぁ〜……あ、あの、一体なにが……」
「はぁ……はぁ……」
状況を理解できていない大森さんはそう言うが、オレはそれを答えなかった。
答えるには…疲れていた。 体力ではなく、精神的に…だ。
とんでもない獣に襲われて、それでも心が狂れないで皆と合流できるかと思ったのに……どうしてこうなってしまったんだ?
同じ人間なのに、問答無用に襲われる謂れなんてないのに、彼らの行動が理解できない。
こんな所にいたら皆で生きて無事に帰れるように考えるのが当然じゃないのか?
「一体何の意味があって…―――」
殺そうとするなんて、と言葉が喉に引っかかった。
だがその生々しい言葉を口にするにはオレには恐ろしい。
「知るか。 ただ、あれがまともな統率下にあるように見えないから…十中八九暴動が起きただろうな」
「ぼ、暴動!?」
「そ、そんな!?」
真理谷の言葉にオレは愕然とした。
だが同時に大森さんは信じられないと言う風な声を張り上げた。
「あそこには土屋機長がいるんですよ! 責任感が強くてとてもイイ人なんです、それが暴動なんて…!」
「わからないぞ」
戸惑いながらも大森さんはその機長を信じようと…信じたいと思いたいが、真理谷はその弁を遮る。
「その機長がその責任感で今でもリーダーシップを取れているとは限らない。 それに、疑うわけじゃないがこの特殊な環境でまともに統率が取れるか怪しいものだ。 ましてや彼が“あそこ”にいるかどうかすらわからないんだ、僕らはその姿さえ見ていない」
それはオレでもわかる理屈だ。
悔しいことに、大森さんと同じように希望を抱いていたから真理谷の冷たい言葉は思いの外堪える。
「……っ…」
だから、コイツの淡々した言葉に、大森さんは反論を返せないまま泣きそうな顔をする。
だが真理谷はそれを気にせず言葉を続けた。
「仮に機長が“あそこ”にいるとしてだ、そうなると何らかの原因で心変わりしたか…あるいは」
「あるいは?」
「いや……(あの集団の中で同調しない者がどうなるか……まさかな、とは思いたいが…)」
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