暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第九十一話 会心の夜襲その十一

[8]前話 [2]次話
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「戦ってもらう」
「尼子家との戦では」
「そうしてもらう」
「そのことはな」
 まさにというのだ。
「誓ってもらう」
「そうした戦だと」
「是非な」
「当家が滅びるか」
「これから栄えるか」
「そうした戦になる」
「そのことをですか」
「兵達にも伝え」
「戦ってもらう」
「そうじゃ、しかしな」
 それでもとだ、元就はさらに話した。
「わしは確信しておる」
「尼子家にも勝てると」
「さもなければそうは言わぬ」
 決してというのだ。
「だからな」
「戦われますか」
「これよりな、しかしな」
「しかし?」
「わしの謀は今まで成功しておるな」
「お見事です」
 それはとだ、志道も答えた。
「そのことは」
「左様じゃな、だが」
「それは、ですか」
「これまでは並の相手であった」
「並の相手でないなら」
「どうであったか」
 それはというのだ。
「わからぬ」
「左様ですか」
「武田や長尾のご子息」
 それにというのだ。
「そうした御仁達にはな」
「効かぬと」
「そして薩摩のな」
「島津家にはですか」
「効かぬとな」
 その様にというのだ。
「思っておる」
「その謀は」
「そうじゃ、謀略は効く相手にはよいが」
 しかしというのだ。
「効かぬ相手にはな」
「使いませぬか」
「使ってはな」
 その時はというのだ。
「倍に返される」
「そうされるからこそ」
「わしは使わぬ、まして」
 元就はこれまでにない強い言葉で述べた、それはまさに自身の力量を知っているかの様な言葉であった。
「天下人の器を持つ御仁には」
「全くですな」
「使わぬ」
 絶対にという言葉だった。
「謀は恐ろしいものだからな」
「だからこそ」
「謀は返されると倍になる」
 元就は言った。
「だからな」
「迂闊には使えぬものですか」
「見破られた謀は効をなくし」
 そしてというのだ。
「そこからな」
「返されるので」
「倍になるからな」
 返されるものはというのだ。
「それ故にじゃ」
「殿もですか」
「迂闊には使われぬ」
 元就はさらに言った。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ