暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第49話 オルタンス邸
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を、前線配備・移動・整備・休養・移動の五つのローテーションで運用している。だいたい二個艦隊でペアを組んで運用するパターンだ。

エル・ファシル星系の帝国軍支配が長期化すれば、キャゼルヌの言う通り恒久的軍事基地が建設され、帝国軍の前線はより同盟側に深く切り込んでくることになる。それは国家の安全保障としては危険な状態だ。本来なら速やかに奪回に動く必要がある。エル・ファシルを襲った帝国艦隊は約四〇〇〇隻と言われているから、前線配備の二個艦隊二万六〇〇〇隻を動かせれば、奪回はそれほど難しい話とも思えない。

敢えてビュコックを少将に昇進させ、独立機動集団を編成させて奪回に動くというのは、効率が悪いことこの上ない。第一三艦隊誕生時のような制式艦隊三個がいっぺんに壊滅してしまうような大惨事があったわけでもないのに、あえて二〇〇〇隻ないし三〇〇〇隻の部隊を新編成するのはどういう意味か。つまりは制式艦隊を複数投入せざるを得ない大規模な作戦が計画されているということ。フェザーンから帝国軍出師の噂がない以上、そんな大それた作戦が展開される目的地は一つしかない。

「ビュコック司令官以外に、エル・ファシルに投入される戦力は決まっているんですか?」
 俺の質問が微妙なところに突っ込んでくるものでなかったのが意外だったのか、キャゼルヌはカップに口を付けたまま片眉を上げて俺を見つめる。
「おそらく決まっているだろう。直接は聞いていないが、複数の独立部隊が編成されるらしい」
「五つか、六つ」
「まぁ、そんなところだろうな」

 基本的に独立部隊とは、宇宙艦隊司令部直属で准将を司令官とし、戦力としては一〇〇〇隻以下の小集団を指す。制式艦隊の解散や再編の為に書類上編成されるものから、耐用年数が近く損傷もあって部隊運用として困難な艦艇の終の棲家というモノまで、存在する理由も経歴も部隊によって様々だ。

 エル・ファシル星系はともかく、複数の星系を傘下に収める星域全体を支配するには最低でも二万隻は必要というのが常識だ。帝国軍はエル・ファシル星系と、後方のアスターテ星域との連絡線は確保しているようだが、エル・ファシル星域全体の制圧には取り掛かっていないらしい。まだ同盟側の勢力圏内にあるエル・ファシル星域の諸星系からの強行偵察によって、約三〇〇〇隻の帝国艦隊がエル・ファシル星系に駐留していることがそれを証明している。
 
 そうなると奪回には少なくとも五〇〇〇隻は必要と考えられる。爺様の機動集団が基軸部隊となり、幾つかの独立部隊を巻き込んで臨時の小艦隊を編成するわけになる。俺の役割は作戦参謀というよりは他の独立部隊との協調・統制に関することが主体になる、かもしれない。

 俺がそこまで考えているうちに、オルタンスさんが部屋に入ってきて、俺とキャゼルヌのコーヒーを入
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ