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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第49話 オルタンス邸
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ーニヒトが関わっている可能性が高い。国防委員会は軍政、統合作戦本部は軍令、宇宙艦隊司令部は実働をそれぞれ取り仕切る組織だ。マーロヴィア以来唾を付けたがっているトリューニヒトが国防委員会参事部に引き抜こうとして、早急にエル・ファシルを取り戻すための独立機動集団を編成したい宇宙艦隊司令部および統合作戦本部戦略部とぶつかったということか。この場合、国防委員会側の大将がトリューニヒトで、宇宙艦隊司令部側の大将がシトレであるのは容易に想像がつくし、キャゼルヌに喋ったのも腹黒親父なんだろう。だが

「喧嘩をするほど、私の価値が高いとは思わないんですがね?」
「シトレ中将閣下のお気に入りであるのは誰の目にも明らかなはずだと思うが?」
「それにトリューニヒト氏が手を伸ばしてきた、ということでしょう?」
「なんだ、わかってるんじゃないか」
「問題は正面切って宇宙艦隊司令部と喧嘩するできるほど、現在のトリューニヒト氏に権力というか影響力があるのかということです」
「……なるほど、お前さんが問題にしているのはそこか」
 キャゼルヌはようやく納得したという表情で、腕を組んで頷いていた。

 マーロヴィアにコクラン大尉を派遣するに際し、ロックウェル少将を説得する程度ならまだわかる。物資調達の為に後方勤務本部を動かしたり、軍部と検察の間を取り持つような口利きをするのも、能動的でタフな元警察出身の、国防委員の行動としては十分理解できる。
 だが軍の、それも恐らくはシトレを中心とする宇宙艦隊司令部の半分と、エル・ファシルを早期に奪回したい統合作戦本部が、タッグを組んで作ろうとしている独立機動集団の内部人事に口を挟めるほどの権力をトリューニヒトが手にしているとは思えない。二・三年後には最高評議会の閣僚の席を手に入れるだろうとはいえ。

「そうか。マーロヴィアみたいなド田舎では、奴の最近の増長ぶりというか、羽振りの良さは実感できないか」
 キャゼルヌの口調はプライベートの中だから口が緩くなったのか、清々しいまでにトリューニヒトに対する軽蔑で満ちていた。
「マーロヴィアでお前さんたちがブラックバートの親玉を捕まえただろう? あれが不味かった。」

 トリューニヒトの仕切る記者会見はマーロヴィアの司令部で見ていた。確かに物事の裏を知らずあれだけ見ればトリューニヒトが『主導ないし中核的なフィクサーとなって』バーゾンズ元准将を拘束した、と誤解してもおかしくはない。

「ブラックバートに煮え湯を飲まされた連中は軍民問わず山ほどいる。それこそお前さんの叔父さんも含めてな。特に星間物流企業だ。奴自身繋がりがある軍需関連と近いし、資本力と影響力は同盟でも抜きんでている。奴はその力を吸収し自分の為に利用しようとしているんだ」
「……」
「軍もマーロヴィアの治安に問題を抱
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