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勿忘草-ワスレナグサ-
大きな罪
過去
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そうになってしまった。だけど涙を堪えて、ページをめくった。
「きょうよにんであそんだ。たのしかった。」
 日付から見て、この日記は四歳ほどの頃だろうか。大きくて、幼い字がノートに書いてあった。
「この日記、貸してもらえないかな。」
「どうして。」
「里奈は、幼い時から日記を付けている。ということは、私達の間に何が起きたのかもわかるかもしれない。」
「そうすれば、新井祥の居場所もわかる可能性がある。」
「そういうこと。」
 私と宏は日記を持って、里奈の母親のところへ向かった。きっと断られると思いながら、私はノートの束を抱えていた。
「あの。すいません。」
「どうしたの。」
「このノートを、貸していただけませんか。」
 母親は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「いいわよ。」
「ありがとうございます。」
 私たちは頭を下げた。まさか、本当に貸してくれるとは思っていなかったからだ。
「玲ちゃん、宏君。がんばってね。」
「はい。」
 二人はノートを抱えて、橋本家をあとにした。
「よかったな、借りることができて。」
「そうだね。」
 だけどこの日記は、私にとっては諸刃の剣なのだ。触れてはいけない傷。それを自分で、傷口に塩を塗るようなことをするとは思わなかった。
「どうしたの、玲。」
「なんでもない。」
 作業場に着いて、私達は持ってきた日記を並べた。
「さてと、まずは小学校前、小学生、中学生って分けていこう。
 そして、書かれた日付を確認しながら、ノートをそれぞれに分けていった。
「終わった。」
「そうだね。」
 日記の数は合計で十七冊だった。
「宏は、そっちをお願い。私はこっちをやるから。」
「わかった。」
 私は、小学校高学年から中学校までの日記を。宏はそれ以前の日記を調べることにしたのだった。
「あれ。」
 ここから、文章表現が変わっている。詳しく読んでみよう。
「この前、過去の日記を読み返していた。どうして、忘れていたのかな。忘れたらいけなかったのに。祥君。今は、確か高畠翼(タカバタケツバサ)君だったかな。玲達も思い出せばいいのにな。」
 新井祥が高畠翼。
「宏。高畠君って、私達の高校にいたよね。」
「そういえば、確かにいたな。」
「その人の下の名前って、わかるかな。」
「翼だったと思うけど。」
 繋がった。彼は今、宏と同じクラスだったと思う。明日、高畠君に確かめてみよう。
 その後二人は、残った日記をすべて読んで他にも何か手掛かりが無いか探した。だが、そのようなものは、彼女の日記からは見つからなかった。
 次の日。普段より早く登校した玲は、宏のクラスメイトである高畠翼を探した。そして、教室の中に一人の生徒を見つけた。
「高畠君。」
「どうしたの、柏木さん。」

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