大きな罪
存在
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か。」
だけど何で私は、全く覚えていなかったのだろうか。私だけじゃない。彼女も、宏も。二人とも何で、言わなかったのだろうか。
「わかんないよ。」
問題は解けても、人の心は解けない。人の心なんて、本当はわからない。その人にしか、わからない。
「何でなの。」
そんな時に携帯が鳴った。
「幸からだ。」
私の頼みを聞いてくれるそうだ。
「ありがとう。」
早速、探してほしい人の名前を伝えた。彼女の人脈は、とんでもなく幅広い。それを武器にして、人を探すのが彼女のやり方だ。
「そうだ。宏にも聞いてみよう。」
私は宏にも、新井祥のことを聞いてみた。だが、返ってきた答えは予想していたこととは、違っていた。
「そんな人は、知らないよ。」
どうして、宏の記憶にも残ってないのだろう。彼女にも聞いてみたいが、もう聞くことすら不可能だ。
「幸から、またメールが来た。」
結果は、そんな人物は存在しないということだ。
「一体、どういうことなの。」
写真があって、母さんの記憶には残っている。だけど私達の記憶には欠片すら無くて、存在すら無い。新井祥という存在が謎になってきた。
「母さん。新井さんの家の電話番号、知らないかな。」
「知っているけど、どうしたの。」
「教えてくれないかな。ちょっと大変なことになりそうなの。」
「わかったから、まずは落ち着いて。」
とりあえず私は深呼吸をして、冷静になろうとした。その後、母さんに番号を教えてもらい、新井家に電話した。二回程の呼び出し音がして、電話が繋がった。
「もしもし。」
少し老いた感じのある女性の声が聞こえた。
「こんにちは。突然、電話をしてしまいごめんなさい。私は柏木玲と言います。」
すると、電話の向こうから「玲ちゃんなの。久しぶりね。」と言われた。
「ご無沙汰しております。祥さんは、ご在宅していますか。」
祥の母親の声が少し、小さくなった。
「祥は、もうこの家にはいないの。」
彼の実家にいないということは、一体どこにいるのだろうか。
「連絡先とか、何か知りませんか。」
「ごめんなさい。何もわからないの。」
母親にも何も伝えずに、どこかに消えてしまったのだろう。こうなってしまったら、見つけるのは困難だろう。
「そうですか。ありがとうございました。」
「役に立てなくて、ごめんなさい。」
「気にしないでください。さよなら。」
「また、電話してね。」
「はい。でわ。」
会話を終了して、受話器を置いた。
「ありがとう、母さん。」
そう言い残して、二階にある自分の部屋に戻った。
「少し、整理しよう。」
つまり、新井祥は存在する。少なくとも、ここ数年前までは存在していた。そして、家から消えて、私達の記憶からも消えた。
「存在しているはず
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