中編
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・あっ・・・いけね!
「今日はご予定があるみたいですね。」
残念そうに千尋ちゃんが言った。
「あ・・・ご、ごめんねー。ちょっと・・・その、どうしても行かなきゃならない急用でさー。次は必ず手伝うからー。」
私は必死に頭を下げた。
「いえ、いいんです。こちらも急な話でしたし・・・すみませんでした。それでは失礼します。」
彼女は健気にも笑顔を見せて丁寧に頭を下げた後、肩を落として歩いていく。その後姿がさみしそうでやたらと罪悪感にかられた。
「ああ、悪いことしちゃったな―。」
「ちょっと、タイミング悪いよね。・・・それにしても学校で携帯電話に出るのまずいって。」
ゆかり にピシリと言われた。
「そ、そうだね。その・・・急ぎの連絡待ちしてたもんで。」
「ふーん・・・。それで、なあに急用って。」と、ゆかり が聞いてきた。
「えっ・・・い、いや。まあ、ヤボ用なんだけどさあ。ともかく一刻を争うと言うか・・・なんというか・・・ははは。」
私は必死に笑ってごまかす。ゆかり がじっとこっちを見つめてくる。
うわあ、怖いなー。何、考えてるんだろ。
私がビクビクしていると、ゆかり は軽く首を振って、
「・・・そう。まあ、いいけど・・・。じゃあ、今日の帰りは別々だね。」と小さな声で言った。
「うん・・・。そうだ! 多分、夜にはいつもの私に戻ってると思うから、また寮でね。」
私が取り繕うように言うと、ゆかり は怪訝そうな顔をしたが、それ以上は、もう何も言わなかった。
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