中編
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件が片付くまで、みんなには言わないでおくことにしたでしょ。」
とゆかり が静かに答えた。なるほどそういうことか。
「でも、風花は知ってるよね。」
私の問いに ゆかり が首を振る。そして、少し悩まし気な表情を浮かべた。
「私は言ってないよ。・・・でも・・・なんとなく気づいてるんだと思う。」
「随分 鋭いんだね。」
「たぶんだけど・・・あの子、君の事が好きだったんだと思う。だから見ててわかっちゃったんじゃないかな・・・。」
(そっ・・・そうなのか・・・! 風花も・・・ !! なんでそんな無口で無愛想なキャラがモテるの?)
内心、動揺しつつも二人で教室に戻ると、扉の前で眼鏡をかけた女生徒が私を待っていた。1年生の伏見 千尋ちゃんだ。生徒会の書記をしていて、桐条先輩の手伝いで生徒会に顔を出したときに何度か会っている。真面目で内気な子だ。
「あの・・・先輩。」
千尋ちゃんがはにかみながら声をかけてくる。
「ああ、千尋ちゃん。どうしたの。」
私が笑顔で声をかけると、千尋ちゃんは少し驚いた表情で赤くなった。
「ん・・・?」
(えっとこの反応・・・こいつ、ここでもモテてるのか!)
ゆかり が横で小さくため息をついた。
(・・・しまった。いつもの癖で「千尋ちゃん」なんて気安く呼んじゃったけど、「伏見さん」とか言わなければいけなかったのかな。無口・不愛想キャラだもんな。)
なかなか自分の中で、『彼』のイメージが定着しない。
「あ、すみません・・・その、今日の放課後、お時間があったら生徒会室でお手伝いいただけないかと・・・。」
「えっ? ああ・・・えーと、どうしようかな。」
ちらっとゆかりを見る。
「別にいいんじゃない。私は部活に出るし・・・。」
ゆかり が目をそらして、ぼそっと言う。
(あれ? なんか微妙な空気。なにこれ、・・・。二股してるわけじゃないよね。何も悪いことしてないよね。・・・まったく、こいつのせいだ・・・このムッツリスケコマシ。)
私はどう反応したら良いのかわからなくなって、固まってしまった。
そこで私の携帯電話が鳴った。
「あ、ちょっと待って。」
地獄に仏とばかりに慌てて電話に出る。
『テオドアでございます。ご迷惑をおかけしております。応急ではありますが、一応の修復が完了しました。』
テオが明るい声で報告してきた。
「ほんとに。良かった〜。実はもう、どうしようかと思ってたとこだったんだ。」
朗報に思わず声のトーンが上がる。
『本当にご迷惑をお掛けしました。つきましては、なるべく早めにこちらにおいでください。』
「わかった。じゃあ学校終わったらすぐ行くから。よろしくね。」
そう言って、私は電話を切った。ようやく元の体に戻れる。難儀な思いから解放される。
ウキウキしながら目を千尋ちゃんに向けて・・
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